第8話 あの後は……
かかった声にはっとする。
いけない。今は1人ではない。思考に没頭しては駄目だ。
「申し訳ありません。少々、考えてしまいまして… この色でなかったら、と……」
「君がその色でなければ、ここには居なかっただろうね。私達には残念なことだけれど、君にとっては幸福なことだろう」
「そちらの方が幸福かは判りません。今の私の様になれるとは限りませんし。私は今も十分に幸せですから」
「その言葉は嬉しいけれど。君の才能はどこにあっても間違いなく輝くものだと思うよ。既に私達は随分と助けられているしね」
「それもまた、お言葉が過ぎるかと。私は神父様の期待に応えられませんでしたし……」
「なんのこと?」
「昨日…… 院の子供達は全員、無事に戻りましたか? 私が倒れてしまった事であの男達に何か……」
「されていないよ! 全員、戻っている。教会も院もいつも通りなのはだからだよ。判るよね?」
「……その言葉を聞けて、ほっとしました。私がここに戻っているということは、院の子供達があの場所に戻ったということだろうと思っていたので……」
「確かに子供達はその場に戻ったけれど、全員でという訳ではなくてね。年少組と年中組は院に戻り、年長組の2人が急ぎでお使いを済ませ、3人がその場で待機という形を取ったようでね」
「そう、でしたか」
「そんな顔しないの。どれだけ君を信じていても、1人で残していくことなんて出来なかったんだよ。あの子達にとっても君は大切な家族なのだから」
神父様の言葉に目を伏せる。
この院の教育水準はかなり高い。
院を出た後、生きていくのに困らない様にと基礎的な教育は基本、全員が受ける。
その上で子供達が望めば、それ以上の教育も惜しみなく与えてくれる。
その為、院には教育に必要な書物や図鑑等の蔵書が多くあり。
実技の為の道具や素材も数多く保管されていた。
私が鑑定スキルを習得出来たのも、その環境があったからこそといえる。
そして、偏りなく、平等な知識を得る院の子供達は、私が異質であることを理解している。
破滅の象徴と呼ばれる存在であることに気付いている者もいる。
それでも尚、妹として可愛がり、姉として慕ってくれる……。
だからこそ、私は破滅に向かわずに済んだのだろうから……。
「私が行くことで回避出来た筈の危険を、私のせいで呼び込むなんて……」
「いや、そこは問題ないよ。男達は全員、事情聴取という事で連れていかれたようだからね」
神父様の言葉に視線を上げ、小さく首を傾げる。
「拘束が解けたのに、襲いもしなければ、逃げもしなかったのですか?」
「……襲うことも、逃げることもさせてはもらえないだろうねぇ」
遠い目をする神父様に自然と首がもう少し傾く。
「いや、手を出そうとしたから、かな。改めて拘束されたようだよ」
神父様がこちらに視線を戻す。
「君が倒れる前に来た2人を覚えているかい?」
問いかけに小さく頷いた。
あの2人に手を出そうとしたのか。それは御愁傷様。
あの2人は、この国の王子とその従者だ。