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第7話 破滅の……

破滅の象徴。


それが、この乙女ゲームのヒロインに与えられた宿業だった。


この国の民は総じて髪と瞳の色素が薄い……というか白混じりのような柔らかい色味で構成されている。

パステルが基本で色味が濃くなればなるほど珍しく、各色の原色ですらほぼ存在しないとされているこの国で、漆黒の髪と瞳を持って生まれてきた。


建国神話では。かつて、この国を滅ぼしかけた存在が同じ色だったとされている。


建国神話は市中では、既にお伽噺程度の昔話でしかなく、色も黒と断定されているわけではない。

それでも、やはり見慣れぬ色や存在を恐れる心理を生むには十分なのだろう。


故に、私は捨てられた。 ………ということになっている。


いや、実際、前世の記憶が戻る前は、そう思っていたし。

仕方がないことだと、恨む気持ちもなかった。

首都で一番大きな教会が営む孤児院に捨て置かれただけ良かったとさえ思っていた。


だが、事実は違うと今は知っている。


この色を畏れた父親。私自身ではなく、この色故に巻き込まれるであろう様々な思惑に恐れを抱いた。

守れないと知った母親。自分達の持つ地位や権力では、隠すことすら出来ないと悟ってしまった。

故に、誰にも知られにくい場所……誰の手も届きにくい場所へと手放すことを決め、この教会へと託したのだ。

自分達が名付けた名と共に。


その事実をヒロインは知らずに育つ。

両親も、フルネームも知らないまま、それでも教会の者達に慈しまれて育つ。

この教会は慈母神を信仰し、子供は国の未来、が第一教義。

その教義に基づいて、破滅の象徴であっても、教会は他の子供達と同じ様に接し、育ててくれる。

ましてや、ヒロインは手がかからず、聡い子供だった。

その色さえ違えば何者にでもなれる可能性を有していた。

だからこそ、余計に惜しんで、大切に育ててくれる。


それも現状変わらない。

私が才を持つ、可能性に満ちた子供であることは間違いないのだろう。


建国神話の真偽は不透明だ。

けれど、その存在がヒロインと同じであるならば、あり得る話だろうとも思う。


成長の仕方を間違えれば……


精神が病めば……


誘導されてしまえば……


何か1つでも違えば、容易く、破滅をもたらしかねない。

それだけのポテンシャルは確実にあるのだから…。


「シア?」

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