第66話 ギルマスの……
なるほど。他の子も全員が抱き上げられたのか。
……いやいや、それなら尚更、私で主張する必要もないだろう?
「なに言ってんだ、お前…」
「頭、大丈夫かぁ?」
「大丈夫に決まってんだろ。さて、言っておくことがある。ここにいる奴等、全員よく聞け!」
ギルド内によく通る声で注目が集まった。
「こいつらはギルマスの客だ。今日だけじゃなく、この先も来ることがあるかもしれねぇが変な絡み方するんじゃねぇぞ?」
ざわっとギルド内が波立った。
それはそうだろう。
こんな子供がギルマスの客ってなんだ?
私も今、知ったがな。
「…ラルスさん」
「おう、なんだ?」
「私達はギルドマスター様にお会いするのですか?」
「そうだが。…言ってなかったか?」
「はい。今、知りました」
「そりゃ悪かった。お前達のこと話したら、どうしても自分が会うって言ってなぁ」
私以外の子供達も己を抱き上げる冒険者に問いを投げている。
それを総合すると…
普段は頼りない位に見えるがやるときはやる。
頼りなく見える程、大人しく優しいが怒らせると何をするかわからない。
ただし、怒りっぽくはない。
…のようだ。
それであるなら「じゃ、大丈夫だね」と子供達の声が揃うのも納得だ。
だが、その事にギルド内が再度ざわついた。
いくら実力のある冒険者の腕に抱かれているとはいえ、大人…それもどちらかと言えばガラの悪そうな大人が揃ってる中での発言としてはおかしく思われても当然だろう。
「お前もそう思うか?」
「…ギルドを束ねる人物が優しいだけの筈がなく、勿論、暴力的なだけでもない筈とは考えますし、そうであれば良いと思います」
「くっくっ…ホント、おもしれぇなぁ」
面白がられるような発言ではないと思うのだが……
「まぁ、いいわ。そんな訳だから、お前達も穏便に頼むぞ? まぁ、痛い目みたいってんなら構わねぇがな」
それはギルドマスターから?
それとも……
「お前達ならあいつらくらい余裕だろうが、まぁ、一応な」
ひそり、と囁かれた言葉に、こっちか、と息をつく。
「おい、今、ため息ついただろ? 抱き上げてっから分かるんだぞ?」
「……知られて困りませんし。というよりは気付いて頂かなくては困ります」
「なんでだ?」
「あの子達は対人経験がありません。兄様方との模擬戦は数に入らないでしょうし」
「…だとしても問題なく蹴散らすだろう? ちなみにお前はあるんだな?」
「あの子達はどちらかと言えば攻撃性の低い子達なので蹴散らすのは無理かと。私とて1度のみです」
「その1度が大変なことになってそうだがな。で、攻撃でないなら防御に長けてるんだろ? それならいけるいける」
……どちらも否定出来ない所が悔やまれる。




