61話 労働を……
「は?」
「もっと我儘を言いなさい、と諭され、それならばと私が言った我儘なので、引けなかったのですよ」
「どれが我儘だ?」
「職業体験が、です」
「?」
「色々な経験がしたかったのです。実際に体験してみなくては分からないことも沢山あると思っていましたし。なにより、何をして良いか判らないまま、何が出来るのかも解らないまま、望まれる場所に行き、職に就くよりも、出来ることを知って、やりたい事を知って、何をするのか決められたのなら、その方が良いのではないかと思ってしまったので」
「……我儘なのか、それが」
「私達は孤児ですから。望んで下さる庇護者の方の所に行くのが最善である、というのも間違いのない事ではあるのです」
「……職を選ぶことすら我儘なのか?」
「より良い場所へ。幸せに暮らせる場所へ。と考えて下さる教会の方針はおかしなことではありません。適性は加味された上での話ですし」
「だが、人にも環境にも慣れない… あわないことだってあるだろ?」
「稀に、そうして戻ってくることもあるそうです」
「稀、なのか…」
「ですから、私は我儘を言っても良いと言われた時、これを望みました。本人が望む場所へ行くことが大事だとしても、何を望むべきかが解らなくては意味がないとも思いましたので。職に就く前に実際に労働を経験するべきだと。それが形となって、今、ここに私達がいるわけなのですが。今はまだ、ここがぎりぎりの許容範囲のようなので」
「他の場所にも行ってみたいが、まだ許されていないからどうか、と?」
「ご迷惑がかかるかもしれません」
「過保護、は解らんでもないが、実際には伝手の問題もあるんじゃないか?」
「それもあるかとは思います。が、偏っているのも事実なので」
「確かに偏ってはいたな……」
「とはいえ、実際のところ、子供が行くとなれば、かける迷惑は増えるのです。作業内容の教授だけでも作業効率が落ちる結果を生みますし。それを理解した上での受け入れ先となれば、そう簡単には広がらないというのも理解は出来ます」
「お前達なら、どこでも引く手数多だろう?」
「有難いお言葉ですが、それは実際に見て、知った上での感想かと」
「ん?」
「教会預かりの、10歳未満の子供を、仕事場に受け入れて欲しい、という要望を受け入れて下さるような場所はなかなかないかと」
「あぁ… 確かになぁ。その言葉だけを聞くと、ちょっと考えるわ」
「でも! 最近は行った先から声かけてもらうことも増えたよ?」
「そこから別の工房へ行ったりもあるな」
「来たことない子でもいいって言ってくれるトコもあるよね」
「ここの牧場もそれだよな」
「まぁ、実際にお前達を見て知れば、そうなるだろうなぁ」
その通りである。




