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55話 可能性は……

子供達が気を取り直して、今後の算段をあーでもない、こーでもないとヒソヒソ話す姿を面白そうに眺める姿に問いを投げる。


「ラルスさんは本当にラビが飼育可能なほど大人しく、人語を理解する知性を得ていたとしたら、どう思いますか?」

「ん? そうだな。他にもいる可能性を考える」


ヒソヒソ話がぴたり、と止まる。


「他、ですか?」

「ああ、ラビ以外の魔獣でも同じことが起きる可能性。あとは凶暴化することなく魔獣化する可能性と知識の高い個体の可能性か」


……!!

この人は… 本当に有り難い存在だな。

受け入れ方も、考え方も柔軟だ。


「凶暴化することなく、ですか?」

「そうだ。凶暴化して討伐対象となり狩られまいと魔力を使って逃げ延びた先で魔素が減って自我を取り戻す、ではなく。取り込み速度が遅いか取り込み量が少量ずつで体に負担なく馴染んで凶暴化に至らない可能性だな」

「……なるほど」

「あとは、元々、獣でも知能が高いのはいるからな。体力や魔術に強化がかかるなら知能にも強化がかかってもおかしくない気がするんだよな」

「ああ… そういう考え方が……」


どこにブーストがかかるのか、と言うことか。

体が大きくなれば、脳も大きくなる可能性が高い。それだけでも知能が上がりそうだと思っていたが…


「すごい…! そんな考え方もあるんだ!!」

「へ?」

「そっか、色々な可能性があるんだ。結果に辿り着く道は1つじゃなくていいんだから!!」

「聞いてた挙げ句に更に先に行くのかよ…」


ラルスさんの呆れた声に苦笑しかない。

元々、私につられて学習意欲の高くなった子供達だ。

この半年の訪問者達との交流や泊まり込みの体験学習で更に色々と向上し、好奇心の赴くままに、何故なに、と問うだけではなくなっていた。

研究者達の影響が大きい気がしているが、まぁ、悪いことではないから良いだろう。

だが、今はそこではなく……。


「ラルスさん…」

「なんだ?」

「子供の戯言、と言わずに私達の話を聞いて下さってありがとうございます」

「……子供の戯言だと、なかったことにするにはちょいと無理がありすぎる内容だったろ?」

「……これまで通りで良い、と。変える必要も、変わる必要もない、と。馬鹿な事を言うな、考えるな、と。言われて、笑われてもおかしくないと思いますが」

「あぁ… まぁ、そういう奴もいるだろうなぁ……」

「……この先、今日、ここに居たことで否応なく巻き込まれるだろうことも解っておられるのでしょう?」

「… … …」

「それでもなお、背を押して頂ける事は私達にとっては幸いでしかありませんが。ラルスさんにとっては…… ……?」


言葉を遮るように頭に置かれた大きな手に首を傾げてみせる。

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