第53話 自然の摂理……
「いや、他のだって、そうやって今ある形に落ち着いたってんなら、それが一番有りそうな線かって話なだけだろ?」
「それは……」
「そうかも、だけど……」
「先程、牛もかわいい、と言っていましたよね? けれど、これからも食事で牛の肉が出れば食べますよね?」
「「「「う………」」」」
「生きていく為に他の命を頂くのは自然の摂理です。動物も、植物も、変わりはありません。ですから、感謝して、余さず頂き、己の糧とすることが大切なのではないかと思います」
「そうだな。食前後の挨拶はそこから来てるって言われるしなぁ」
子供達は神妙な顔で頷いた。
「…話がずれましたが。ラルスさんも賛成して頂けますか?」
「ん?」
「魔獣だから狩る、ということに異を唱えることを」
「あー………」
ラルスさんは、ガシガシと頭を掻いて、子供達を見て、巣穴を見て、草影でひっそりとこちらを窺う成体のラビを見た。
「…オレは狩ってきた側だ。それはこれからも変わらない。それでも……」
ラルスさんの視線を受けたラビが草影から進み出た。
その瞳にあるのは狂暴性ではなく、ただの獣のような知性の乏しさでもなく……
「理解するのか、言葉を……」
見つめ返される視線に、ラルスさんは膝をついた。
「全て、でなくとも理解する、というのなら……」
目線を合わせて、ラルスさんは言葉を続けた。
「ここに住みたいならば、人も、人が育てるものにも手を出すな。それをした瞬間、討伐対象と見なされる。狩られる理由を与えるな」
ラビの耳がピクリと動く。
「害がなければ狩らんように、仲間達と雇い主には伝えてみよう。そこで賛同を得られない可能性もある。どう対応することになるかもわからんが……」
「!! 牧場の人にはボク達からも話します!」
「院の方にも連絡して協力してもらえるようにお願いします!」
子供達の勢い込んだ声に、ラビは驚いたようにビクリと身を震わせたが、クルリと周囲を見回すと何事もなかったかのように巣穴へと向かい、外にいた小さなラビもそれに続いた。
「……あの大きさで、あの巣穴に入れんのか?」
ラルスさんの言葉に子供達も小さく首を傾げて行方を見守る。
小さなラビがするすると巣穴に消えたあと、成獣であろうラビは一度こちらを振り返ってから、ぎゅむっとでも音がしそうに、押し込むようにして巣穴に入り…… 少しして顔だけを出した。
……どやっとしてるように見えるのは、目の錯覚だろうか…?
「入口はギリギリにして中は広くしてあるってことか。外敵を考えりゃ、まぁ、間違いない作りだが… 野ウサギと変わらんなぁ…」
苦笑が混じるラルスさんの言葉に息をつく。




