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第51話 害が……

「あー…… まぁ、それは有り得ない話じゃないかもなぁ」

「その場合、勿論、襲ってきた方が悪い、ということも解りますが。あちらとしても狩られる、と感じての抵抗… 反戦なのだとすれば… 今、ここで、互いに敵意がない状態で出会ったことが攻撃的にならない理由、になる気もするのですが…?」

「攻撃的なのはお互い様ってか?」

「はい。……現にあちらは今、こちらを窺ってはいますが、攻撃性は見せておりませんし……」


ヴェールで隠れて視線で誘導出来ないのは、こういう時は不便だな……

思いながら、そっと指先だけで示す。

ラルスさんは視線だけで確認して息をつく。


「……親か」

「多分、ですが……」

「よく気付いたな」

「魔力は薄いですが、流石に存在感が……」

「まぁ、でかいからな。色も森の中じゃ目立つし」


ラルスさんとの会話で子供達も気付いたようで、腕に抱えていたラビをそっと地へ降ろす。

巣穴に戻る個体もいれば、足元で見上げたままの個体もいる。


「……あちらも討伐対象なのですか?」

「本来なら、な……」


子供達の視線がラルスさんに戻る。


「これまで考えたこともなかった。狂暴性のない魔獣がいる、なんてことは。人はけっして強い動物じゃない。種としては限りなく弱い。だから集団になって、武装して、害をなすものへ対抗してきた。そこには魔獣も獣も区別はない。同種である人すら含まれる」


害あるもの… で一括りにするのなら当然だろう。


「……じゃあ、害がなかったら、いいんじゃないの?」


子供の1人がぽつりと問う。


だが、それは違う。

害などなくとも狩られるのだ。


「……日々の糧として、私達は他の命を頂いていますよね」

「それだけじゃなく対抗する為の武装の素材としても欠かせない」


子供達はハッとして… ラビを、ラルスさんの武装を、牧場を見た。


「害がなくとも自分達の糧の為に狩る。狩り、狩られる行為は自然の摂理でもある」


ラルスさんは真剣な目で子供達を見る。


「そのちっさいやつらはまだ誰も襲ってないかもしれない。ただ大きくなるだけかもしれない。そう言いたいことは分かる。だが、それは確実なことじゃない。想像であり、願望だ。いつ狂暴性を得るかは判らない。あっちにいるでかいのは人を、牛を襲ったかもしれない。それをそのままにしておく危険性を否定出来ないんだ」


子供達は唇を噛みしめ、拳を握った。

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