第38話 望みは……
「どうしたんだい!? 何処か辛いところでもあるのかい!?」
正面にしゃがみこんでヴェールの面布をあげられた。
「……少し疲れただけです」
…間違った事は言っていない。
それでも、神父様は探るように見つめてくる。
「…あのような方々だとは思いませんでした」
「……それは、まぁ……」
「……あの御様子では、今後もあるかもしれません」
「…それは、どうだろうね…」
「……当人ではなく、の可能性も含めて、ですが…」
「ああ…… 成る程……」
「……どなたが、どのように、来訪するのだとしても。その対応には神父様の手を煩わせることになると思うと…本当に申し訳ありません……」
「シアが謝ることではないでしょう?」
「私が興味を引いた結果ですから……」
薄く笑んだ顔が、神父様の瞳に映っている。
……ああ、これは心配させる顔だ。
理解はしても、取り繕う余裕は流石にない。
「……シアが望む結果にはならなかったのかな?」
「……判りません」
「シアが望むものを、教えてはくれないかい?」
「……説明するのは、難しいです」
「どうして?」
「……不確かなもの、だから?」
「目的が? 手段が?」
「……全てが」
「全て…… でも、望みは解っているのでしょう?」
「はい」
「説明ではなく、望みそのものを教えてもらうことは出来ないのかな?」
「それは……」
「それも難しい?」
「……いえ」
一度、目を閉じ…
心を決めて……
もう一度、しっかりと神父様を見て、告げる。
「全員が幸せになれる未来、です」
神父様は一度瞬いて、少しだけ首を傾げた。
「全員……?」
「全員」
「この世界の全ての人?」
「それを出来ると考えるのは流石におこがましいかと思います……」
「…では、孤児院の子達?」
「幸せになるはずの兄弟達が、幸せに向かっている兄様姉様達が…… その道から外れないように、最大限の配慮と努力をします……」
「……まさか、我々?」
「神父様達の今の生活を、守る配慮と努力も惜しみません」
「……シア?」
「ですから、どうか、頼ることをお許しください。私の手だけでは足りないのです」
「……」
「どれだけ研鑽を積もうとも、どれだけ時間を費やそうとも、私1人分では到底、叶わぬ望みなのです」
「シア」
神父様か両肩に手を置いた。
「頼りなさい」




