第37話 隠すのは……
……乗り切った?
正解は、判らない。
けれど、私が望む方向へ正しく興味を向けられた、と思う。
……幼いここで、修正が効くなら、先は全く違ってくるはずだ。
歪めるつもりはない。
早めるだけだ。
それが、どれだけ効を為すかは判らない。
……何も変わらない可能性だって勿論ある。
それでも、僅かでも可能性があるのなら試していく。
私が望む未来の為には、それしか道がないのだから……
それにしても……
「……疲れる」
子供の体と精神……いや、頭脳のキャパの問題かも知れないが。
「……体力も必要なのだろうなぁ」
小さく息をつき、鈍った頭で次を考える。
「さしあたっては… 神父様か…… 見逃してはくれないだろうなぁ…… さて、どうしたものか……」
…何を、何処まで突っ込まれるか。
…何処まで説明していいものか。
既に5歳児としておかしいことは認識されていたはずだが…
今日の対応はあからさまにそれを凌駕する内容だったはずだ。
けれど、今の自分で、望む先の為に動くなら、これがデフォルトになって、これまでのような5歳児としての異質ではすまなくなる。
「……あぁ……もう少し、考える時間が欲しかった……」
けれど、もう始まってしまった。
否、始めてしまった。
戻ることが出来ない以上、止めることも出来ない。
止めることも、立ち止まる事も、無責任に投げ出す行為で、それは決して許されて良いものではない。
何故なら、これは、私が、私の、望みの為に始めてしまった事なのだから。
ただ、自分の身を粉にしても足りない故に。
多くの、誰かの手を借りて。
あらゆる可能性から、どの手段を選ぶのだとしても。
全て、私の責任として、やり遂げなくてはならない。
……のだが。
「……それすら許されないのだろうな」
先程の流れを思い起こして息をつく。
私が全てを背負い、責を負うことを神父様は見逃してはくれないだろう。
どんな理由をもってしても、身を粉にすることすら、許されないだろう。
「どう、言えば…… どう、動けば…… いや……バレるし、見つかるだろうな…… 隠すのは多分無理だ……」
危険がなければ見て見ぬふりくらいはしてくれる。
だが、放置はしてくれない。
これからの行動は危険とまでは言えないが、5才児としてはあり得ない程の稼働を必要とし、心身共に負担がかかる行為と見なされるだろう。
必要な伝手を得る為の奔走も。
必須な能力や技術を得る為の鍛練も。
時間がない以上、どの作業も、詰め込んで、急ピッチで仕上げていくしかないのだが。
端から見れば、磨り減らして、磨耗していくような……
何かに追い立てられ、生き急いでいるかのような……
どんなに気を付けていても、そんな姿に映る可能性は否定出来ない。
勿論、そんなことはないのだが。
そうと気付き、知った上で、そう映る事を逆手に、休ませようとしてくるだろう事が容易に推測出来てしまう。
そして、実際に負担が大きい以上、反論は崩され、絡め取られるだろう事も……
「……有り難いことだけど…… 今の自分には、厄介でもある… 困ったな……」
ぼんやりと虚空を見つめる時間は長くは続かなかった。
廊下を歩く足音が近付き、ノックの音の後にドアが開かれた。
「戻り……シア!?」
名を呼び、駆け寄ってくる姿を視界に納めて、苦笑が浮かぶ。
……絶対に無理だ。




