第36話 もう一度……
「その為にも、ここで知ったことを活かせる方法を考えなくてはな…!」
「そうですね」
「可及的速やかに、を掲げて頑張ってみようと思う。だから、次を…また会って話しをしたい、と思うことを許してくれるか?」
…それが原動力になるのなら、否定する必要はない。だが……
「…では、その時が訪れるなら… もう一度、最初から始めましょう」
「最初から?」
「はい。今日のような密会ではなく… 開かれた場所であれば、私はレシアノールではないでしょう。ですから、はじめまして、から始められるはずです」
「「!?」」
驚いた顔の2人だったが、アンディゴード様は直ぐに納得した様子で頷いた。
「成る程… 例え、こちらが同じ名乗りをしたとしても、問題ない、と」
ドレゴルド様がアンディゴード様を振り返る。
「どちらを名乗るとしても、そちらが別の名を名乗るのであれば、はじめまして、でしょう」
「……それは」
「市井で会い、城で会った際に、貴方も、そう仰いますでしょう?」
「!」
「それと同じ、ということです」
…成る程、それは出来るのか。ならば……
「…その時を何時まででもお待ち致しましょう、と言えれば良いのですが、それは少々難し……」
「何故だ!?」
「……ここは孤児院ですので。ここに居られる時間には限りがございます」
「あ………」
「……とは言え、貴女はまだ5歳でしょう?」
「身の振り先があれば、幾つであろうとも、ここを離れることを厭いはしません。1人外へ出れば、1人受け入れられるのですから」
「「………」」
「里子とするなら幼い方が良いと私より幼い子がここを離れることもありました。私は、見ての通りですので、望んで下さるような方はおられないでしょうが、故に他の子よりも早く独り立ちすることも視野に入るでしょう」
「……ならば、なりふり構わず急ぐとしよう!」
ぐっと拳を握ったドレゴルド様が身を翻す。
「戻るぞ。神父殿、礼を欠いてすまないが今日はこれで失礼させて頂く」
「それは構いませんが、外まではご案内を」
歩き出そうとするドレゴルド様の前へ神父様が歩を進める。
「すまないな。……神父殿、厚かましい願いだが、この先、知恵を拝借することを許してもらえないか」
「誰に、でございましょう?」
「神父殿に、だ。神父殿は城に来られているのだろう?」
「承りましてございます」
「助かる」
神父様がドアに手をかけたところでドレゴルド様が振り返る。
「必ず、また会おう」
「……畏まりましてございます」
深く礼を返す。
「では失礼する」
「失礼致します」
短い言葉を残し、部屋を後にする姿は礼をしたままで見えはしない。
それでも、ドアの開閉音と遠ざかる足音でそれを確認して、その場に座り込んだ。崩れ落ちる勢いで……。




