第33話 比べるなら……
「他者から吸収し、己の糧にし、成長する。それは基本の在り方だと思うのです。身体も、頭脳も、心も、不足を補うのは自己研鑽だけでは無理があると思いますので」
「そうだろうか……」
「そもそも、我々は、庇護する者が居なければ生きてゆけぬ未熟な形で生を受けるのですし」
「あ……」
「沢山間違えて、沢山失敗しながら、ご飯を食べることを覚え、歩くことを覚えて来たのです。これからだって、沢山間違えるでしょうし、沢山失敗もするのでしょう。けれど、それが成長していくこと、なのではないかと思うのです」
「うん……」
「これまでを振り返れば、協力してくださる誰かの手を弾くような事はされないと思いますし」
「確かに……」
「…と、考えるのはおこがましいでしょうか?」
納得したドレゴルド様から、アンディゴード様に顔を向け、首を傾げて見せる。
「そこで私に聞く必要があるのですか?」
「貴方様がお目付け役なのでしょう?」
「それは、そうですが…」
「ならば、こちらの方をきちんと見て、導く事も貴方様のお役目なのでしょう?」
「そうですね」
「ですから、私が示した可能性の是非を問うています」
「是非…?」
「こちらの方に告げてよかったでしょうか?」
「…必要があれば」
「必要だとするならば、私が示して良かったのでしょうか?」
「良いのでは?」
「私が示さなければ、貴方様がしてくださいましたか?」
「………」
「何故、でしょう?」
「…ご自身で気付いて頂く方が良いかと」
「では、私が告げるのも止めるべきだったのでは?」
「それは……」
「貴方様のお考えは少々、厳しくありすぎませんでしょうか?」
「……?」
「こちらの方は私と1つしか違わないと先に仰られました」
「だが、貴女は気付き、考え、知り得ているでしょう?」
「私と比べるのは間違っています」
「貴女の方が年下でしょう?」
「私が異質なのだと仰られたのは貴方様です」
「……」
「この年でそれは有り得ない、と思われたからこそ、私の異質さが目を引いたのではないのですか?」
「私でも理解出来る事柄を、気付けもしないとは……」
「失礼ですが、貴方様はお幾つであられますか?」
「10になりましたが、それが何か…?」
「4年の差…… 比べるなとは申しませんが、比べるのであれば、同じ年齢だった時のご自身や兄君様方とにして差し上げなくては、流石に厳しいかと……」
「……!?」
「こちらの方に限らず、王侯貴族様方は往々にして早熟で大人になるのも早いのでしょうから、4年差は大きいかと…」
「……!」
「4年前の貴方様方はこちらの方と比べて、どうでしたでしょうか?」
「………」
「余り、多くを求めすぎるのは酷な事かと。こちらの方以外にも言える事ですが… 期待の重さに押し潰されてしまうかも知れませんし、良さを消してしまうかも知れません」
「……!?」
「人の成長速度は、それぞれ違うものでしょうから…」
驚愕の表情を隠しもせず、返す言葉もなく、口を開いては閉じるアンディゴード様に小さく息をついて目を伏せる。
……そろそろ潮時か。




