第27話 気になるものは……
「……?」
「例えば、貴方様が気にかける方…… ご家族や護衛方、研究棟の方々が何処かへ、内密に出掛けていたら気になりませんか?」
「む………」
「それが、同じ場所へ通っていたとしたら? 何があるのか、なにか気になったもの、気に入ったものがあるのでは…… と気になりませんか?」
「……それは……」
「私は気になりますよ。子供達が隠れて小動物を育てているくらいの秘密なら、まだ良いのですが。その隠し場所によっては危険な可能性もありますし。そもそもが外へ行こうと画策している場合もありますから……」
ちらりとこちらを向く視線。
それは、私が先導した話ではない。
寧ろ、巻き込まれた上で、神父様が間に合うように手引きした。
今、例えるべき話からは微妙にずれているだろう。
「まあ、秘密にされると気になるのも人の性でしょう。隠されたものに興味が向くのも同じ事かと」
小さく首を傾げると、神父様はするりと話を戻していた。
「……此処に僕が気にする何かがあると、僕の行動が示すのか…? それを知ろうとする者は… 僕への興味がある…? それが作用するのは………」
ぶつぶつと呟き出したドレゴルド様は神父様に任せて、置いておくとして。
「あの…」
「なんでしょう?」
「もし、お持ちで、支障がないのであれば、見せて頂きたいものがあるのですが……」
「何を見たいとお望みですか?」
「魔力錠です」
「……?」
アンディゴード様の眉間に皺が寄る。
「騎士団所属で、高貴な方の護衛であれば、お持ちかと思ったのですが……」
「いや。所持はしていますが。何故、そのようなものを?」
「書物には詳しい記載がなく、どのような仕様なのか知りたいと思っていたのですが、教会にも現物はなく、諦めていたのです。それを私が見せて頂くことは難しいでしょうか?」
「仕様…?」
「はい。どのように魔術を… もしくは魔力を使えないようにしているのか、が気になっておりまして」
「……ん?」
「封じ込め、遮断、散開させる方法があるのか… 吸収、なのだとすれば魔石に…? けれど、魔石は希少なものと聞き及んでおりますし……」
「…言われてみれば、確かに。だが、石などは見当たらなかったような…?」
アンディゴード様は懐に手を差し入れ、目当ての物を取り出した。
「…やはり、石はないようですね」
アンディゴード様が取り出したそれは、なんの変哲もない手錠に見えた。
「持たせて頂くことは可能でしょうか?」
「どうぞ」
「ありがとうございます」
アンディゴード様が手渡してくれた手錠を目線の高さまで持ち上げ、観察するが、見た目は只の手錠でしかなく、金属の重さと冷ややかさを手に伝えて来るのみ。
片手で支えられる重さであることを理解し、左手に乗せ、右手の指先で表面をなぞっても気になる部分はなかったが、裏面に触れた時、違和感を覚え、僅かに魔力を通してみる。
「……!」
浮かび上がった魔力回路の複雑さに息を飲む。
「これ、は………」
アンディゴード様も言葉を無くすほど、か。
「……判読は極めて難しいですね」
魔力を消せば魔力回路も消え失せた。
「……とすれば」
手錠からアンディゴード様へ視線を戻す。
「鍵もお持ちですか?」
「あ、ああ……持ってはいるが…?」
「では……」
カシャン、と思っていたよりは軽い音を立て、手錠は私の左手首へと嵌まった。
「は………!?」




