第23話 懸念は多く……
「何を疑っているんだ。僕より小さいのだぞ」
疑いの眼差しを隠そうとしないアンディゴード様をドレゴルド様が嗜める。
「ですが、どう考えても、5歳児の言動ではないのです」
「僕もそれを言われてきたが?」
「貴方以上…というより、別種なのですよ、レシアノール嬢は」
「僕以上なのは解るが、別種?」
「貴方のそれは興味が向くものに限られた特化です。ですが、レシアノール嬢は全般において5歳児とは思えない言動なのです。こちらでは貴族や社交に関する知識も教育の一環なのですか?」
アンディゴード様の問いは神父様に向いていた。
「有り難いことに孤児院を出た後の働き口として選択肢には御座います。故に望む子供には困らぬよう知識、礼儀を身に付けさせることも我々の義務と心得ております」
「望むなら、この申し出は有りなのでは?」
向き直ったアンディゴード様の問いは解らないではないが…。
「望んでいるわけではありません」
「では、何故?」
「………この姿です。せめて礼儀作法くらいは身に付けておいた方が良いだろうという判断でしょう」
「自らの意思ではない、と?」
「最初は。けれど今では感謝しております。こうして、王候貴族様を前に大きな失礼をすることなく、立たせて頂いておりますので」
「……私は嫡男ではないのですが」
「家督を継ぐ方だけが、影響力を持つわけではないかと」
「……そういう所も5歳児とは思えないのですが」
「……こちらには様々な方が参られますし、外に出れば昨日の様なことも御座いますので」
「必然である、と?」
「護られるだけでいたくないと望みは致しました」
「なるほど……」
アンディゴード様は1つ頷くとドレゴルド様に向き直った。
「今の会話で貴方は彼女の懸念に気付くことが出来ましたか?」
「……?」
「貴方には側近候補もまだ見つかっていませんが、同様に婚約者候補も決まっておりません」
「そうだな」
「顔を隠した女性を側に置くこと。それが周囲に与える影響…感情、そういったものを懸念しておられるのですよ」
「…うん? ……いや、だが… 僕は第3王子で、婚約者候補も兄上達だって最近決まったばかりだろう?」
「逆なのですよ」
「逆?」
「王妃という重責に遠く、だが、王族となれる。令嬢方もその親も、狙い目だと考えるのは当然の流れなのです」
「……令嬢方が僕を訪ねてくるのは……」
「勿論、そういう打算ありきでしょう」
「そうか……」
「私が出るまでもなく、全て、返り討ちにしておられるのに、何故、そんなに哀しげなのですか」
「返り討ちとはなんだ! そんなつもりはない…!! 僕に興味を持ってくれているのだと沢山、話をしているだけだろう!?」
「興味は御座いますでしょう。ただ、その会話で無理だと思い知らされて、諦める方ばかりですので。返り討ち、と表現したまでです」
「…むぅ。……いや、待て! お前が出るまでもなく、とはどういうことだ?」
「……それも私が配置された理由の1つですので」
「どれだ……!?」
小さく溜め息をついたアンディゴード様の視線がこちらに向いた。




