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第2話 始まりは……

全ての始まりは10年前に遡る。



その日、私は珍しく外出していた。

孤児院に住まう子供達と共におつかいを頼まれていた。


神父様から預かった幾つかの包みを手に道を進む子供達、その最後尾を一番年少の少女と手を繋いで着いて行く。


少し進んだ先でガラの悪い男達に道を塞がれた。

前方にいた多少、年長な子供達が警戒を顕にしつつ、言葉を交わす。

男達曰く、ちょっとした手伝いをして欲しい、難しいことではない、上手に出来れば報酬も出す、と。

子供達は警戒と戸惑いを見せつつ、一歩下がる。


その判断はきっと間違いではない。

けれど、このままでは良くない結果が待っている。


すがるように繋ぐ手に力を込める少女の頭を撫で、前に立っていた少年に託し、更に前へ出た。

男達と子供達の間に滑り込むように進み出た瞬間、男達が目を見張って動きを止めた。


なるほど、これを知らないと言うことは、孤児院への悪意ではないのだろう。


「わたしたちはさきをいそぎます。もうしわけありませんが、ほかをあたってください」


丁寧に言葉を紡げば、男達は驚いたように瞬いた。

その機を逃さず、子供達に後ろ手で「いって」と指示を出す。

子供達が一斉に駆け出す足音に、男達が一拍置いて動き出そうとした瞬間、両腕を広げて見せた。


「おわせませんよ」


小さな呟きを男達が聞いたかは判らない。

けれど、捕まえようと伸びてくる手が、子供達を追おうとする足が、それを成すことはない。

何故ならば、男達は全員、その場に倒れ伏したから。

そして、縫い付けられたかのように起き上がれずにいるのだから。


神父様には何か視えているのだろうか。

何故、今日、私が必要だと解ったのか。

いや、そこは考えても仕方がない部分だろう。

ならば、今、出来ることを、求められていることをするまでだ。


「わたしたちにかかわらず、おひきとりを。おやくそくしていただければ、うごけるように……」

「何をしている!?」


交渉しようとしていた言葉は割り込んだ少年の声に止められた。


確かに、倒れ伏した男達と、顔をヴェールで隠した幼い少女の組み合わせは意味不明だろう。


「これはなんだ? 何が起きた? お前がやったのか? 何をした!?」


矢継ぎ早な問いを投げながら駆け寄る足音に視線を向けた。

駆け寄ってくるのは少年が2人。


その姿を認めた途端、衝撃が駆け抜けた。


脳裏に映っては消え、耳奥に響いては消える……それは、なんの記憶………!?


体がぐらりと揺れた。

少し高い少年の声は止まず、踏み出され、伸ばされた手を視界の端に捉えたそこで、記憶は一旦、途絶え………。



途切れた記憶に次に繋がったのは……暗い部屋の中。


目を覚ました私は、ここはどこだ、とぼんやり考え、知らない部屋だと感じ、自室だと思う。


体を起こせば、固い寝台に簡素な設えの布団。


拘りがあったわけではないが、もう少し良いものだったと考え、これが普通だと感じる。


意識が覚醒するに従い、乖離している記憶の意味に気付き、頭を抱えた。


こんなことが本当に起きるなんて………


思い、息をつき、抱えた頭から引き離した手を見る。

小さな手だった。


「私の… 今の私の名はシア。レシアノール…… レシアノール=ランディルズ。まさかの…… ヒロインか…………」

明日(1/3)までは連続投稿します。

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