第19話 学びの形は……
神父様に促され、風を動かして香から昇る煙を誘導する。
「ん? なんだ?」
風の道を作り、煙の線で文字を綴る。
「おお…!? いや、待て待て! 何故…そうなる!? 普通に風を起こせば煙など散ってしまうだろう!?」
「風…と言いますか、空気? で壁を作っております」
「…細やかな操作が必要そうですね」
「コツを掴むまでが難しいようですね」
「もう1つ… 失礼致します」
手の上に置かれたままの白煙の球体の形を変えてみせる。
「馬か!!」
「圧縮の仕方を変えれば、どのような形にも出来ますので」
「子供達が術の訓練や勉強を、そうと思わず取り組んでおりますよ」
「兄様や姉様達と遊びながら覚えていきますから、余計にそうなるのかと」
「遊びながら、とは?」
「神父様やシスターの皆様だけでは手も時間も足りませんから、年長者が年少者に基本的な読み書き計算や、初歩的な術の使い方等を教えてくれます」
「教える、というのは自身がしっかり理解していないと出来ないことではあるのですが。教える事で復習していく、という事にもなりますので、子供達の行動に甘えています」
「甘える、と言うことは神父様方の指導ではないのですか?」
「いつの間にか出来上がっていたのですよ。最初はきっと、分からなかった所を子供達で話して…というような行動からだったのでしょう」
「ああ、それで理解出来ていた者が教えて、ということか」
「はい。得意なものもそれぞれ違うので補いあって…今に至る、といった所でしょうか」
「上手く出来ているものだな」
感心したように呟く姿に、確かに上手くいった、とは思う。
神父様達が子供達に使える時間は限られている。
知りたいことは沢山あって。
教われる時間は限られていて。
けれど、本を読むにも文字の習得が必要で。
ならば、習得済みの兄様や姉様に質問しよう、と気付いたのは何時だったか。
ただ、孤児院の子供達は生活に置いて、自分達の事は自分達でやる事が基本で、年齢が上がれば小さな仕事を始めたりもして、時間に余裕があるわけではない。
教えてもらう時間を作る為、兄様達の手伝いをした。
効率良く、作業する事を考えた。
そうやって作り出した時間で教わって。
それが私だけでなく、他の子供達にも広がって。
いつしか、子供同士で教え合う形が出来上がっていた。
「この煙を使う案もシアの言葉から始まったものですし。子供達から教えられる事も多いのです」
「そうなのか!?」
「いえ、私は……」
「何を言われたのですか」
「水のように色が変えられたら、風の動きも解りやすいのに、と言われましたね」
「形にして下さり、私達に学ぶ道筋を示して下さったのは神父様です」
神父様からは折に触れて、さりげなく助言がもたらされていた。
そして、自分達の業務や作業に取り入れてもいた。
抜け目のない人である事はこの事からも判る。
「なるほどな…」
手の上の白煙の馬を机に置き、私をひたと見据える瞳には先の興味や好奇心ではなく、決意の色が見えた。




