第16話 再会は……
孤児院の応接室の扉の前で神父様は足を止め、振り返った。
かかる言葉はなく、ただ頷き返すと、神父様も小さく頷いて扉に向き直った。
コンコンコン………
「お待たせして申し訳ありません」
「いいや。随分、早い。…と言うことはまだ目覚めないか」
神父様が扉を開き、声をかければ、さらりと返る声は、昨日より低く聞こえた。
「いいえ。連れて参りました」
「何…!? 幼いとはいえ女性の身支度には時間がかかるはずだろう…!?」
驚き混じりの声は昨日の声に近く聞こえた。
「我々の身支度はさほど時間はかかりませんので。さ、こちらに」
促され、神父様と共に入室する。
「失礼致します」
室内には2人の少年の姿があった。
1人は座っていた椅子から腰を浮かし、驚きの様子を見せた… 第3王子ドレゴルド様。
1人はその背後に立ち、静かな、冷えた瞳をこちらに向ける… 従者アンディゴード様。
「お待たせして申し訳ございません。面会希望を承りましたレシアノールと申します」
応接室に入った所で、丁寧な礼を心掛けて挨拶を述べる。
「君が… 確かに姿は昨日通りだが……」
「この院で、この様な姿の子供は私だけにございます。不信を招きかねない事は重々承知しておりますが、不快を与えるよりはと、こちらの姿のまま、お目通りに参りましてございます」
「不快、だと……?」
「お目汚しになりますれば…… どうぞ、ご容赦頂きたく存じます」
「いや、だが……」
「もう、よろしいでしょう」
顔を上げずに言葉を重ねれば、別の声が混ざった。
「元より素顔を知る訳でもありませんし。幼いとはいえ、女性がここまで仰られるのですから、これ以上は追及為さらず置くべきかと」
「……っ!! そ、うだな… すまなかった。顔を上げてくれ」
礼を解き、姿勢を正せば、少年2人がこちらを注視していた。
「昨日はお手を煩わせたとお聞き致しました。誠に申し訳ございません」
もう一度、頭を下げる。
「やめてくれ。それは僕の我儘故の行動でもある。君に謝罪されるような事ではない」
「我儘、でございますか?」
「そうだ。他の者が教えてくれなかった、君がしたことを知りたいと思ったのだ」
「私がしたこと、とは…どの事でございましょう?」
「男どもを拘束していた方法だ。奴らにも聞いたが要領を得なくてな」
「それは…… そうでございましょう……」
やられた側が、何をされたか正確に理解するのは普通に考えても難しい。
ましてや私は隙を突いて、瞬間的に行った。尚更、訳が解らなかっただろう。
「何をしたのだ?」
「魔術を使用致しました」
「どのような!?」
「風と空気を操らせて頂きまして……」
「どのように!?」
「足下に小さな突風を起こして転ばせて、上から押さえ付けました」
「押さえ付け… なにで!?」
「空気、で……」
「空気でどうやって!?」
「固めて…」
「空気は固まるのか!!?」
「あ、あの……」
「…少し落ち着いて下さい」
前のめり過ぎる質問と体勢に戸惑ったのと同時に、背後から押さえ付けてくれる言葉と手が伸びた。




