第15話 覚悟を……
「は……?」
思わず声が落ち、窓へと視線を向けた。
閉め切られてはいるが、僅かに差す陽の向きからは、まだ昼にすらなっていないように感じられるのだが……。
「まだ、お昼ご飯前だよ」
「そう、ですよね。昨日の今日で…… もう来られたのですか!?」
神父様に向き直り、驚き混じりの問いを投げてしまう。
「うん。まさか、こんなに早く来られるとはね…」
「王城の警備はどうなっているのですか…!? まさか… 王族としての訪問なのですか………?」
「いいや。先日と同じ様な装いでいらしたから、お忍びではあろうと思うのだけれど…」
「…この国の王族…自由過ぎないですか……?」
「…否定出来ないのが、ねぇ」
「否定して頂けないのですか…?」
「王子方が王族としての義務や教育を怠らない限り、王も王妃も、王子方の行動を阻害しようとは為さらないからね」
「あぁ…… きちんと為さった上での行動だから許されている、と…」
「王子方の感性……新しい発想を楽しんでおられるようでね」
「なるほど………」
王子に限らず、この国の王の子は皆、何かに長けていた筈だ。
それを伸ばす教育方針がこれか。
悪くはないが、周囲の者は大変だろう……。
だが… それすらも味方に付けられたなら……。
「まだ、目を覚まさない可能性も高いと伝えた上で様子見に来た事になっているけれど。シアはどうしたいのかな?」
「……お会いします」
ベッドから降り、身支度を整える。
「昨日も、今日も、お忍びで…… けれど神父様には素性を明かしておられる。けれど、その素性を神父様は私には伝えない。…で宜しいですか?」
「君は私が来るまで眠っていた。君が倒れた時に居合わせた少年が君を心配して来ていると起きた君に伝えた、で良いかな?」
互いの言葉に頷き、ドアへと向かう。
「…明かすと思いますか?」
「話の流れ次第、という気がするかな」
「昨日はどのように…?」
「唐突に。故に計り損ねたけれど。こんなに早く来るならば、その為の布石と牽制だったのだろうね」
「なるほど……?」
「シア」
ドアに手を掛けたところで呼び止められる。
「はい」
「君のしたいようにしなさい」
ドアから手を離し、振り返る。
「…良いのですか?」
「君の事を信じているからね。後の事は任せてくれて良いから」
「……彼方の望み……出方次第ではありますが… 良い方へ向かうよう尽くしますので」
「うん。では、行こうか」
神父様がドアを開けて、先に部屋を出る。
その背を見て、決意を新たにする。
かけるであろう、迷惑も、心配も、手間も… 必ず報いて、良き未来で返そう。
その手始めが第3王子とその従者。
本来なら10年後に始まる筈の交流と攻略を。
今、この時から始める。
その覚悟を持って… 神父様を追って部屋を出た。




