第11話 昨日のアレは……
少々のパンと果実、たっぷりの水を持って、先程の部屋に戻る。
ここは医務室であり、隔離室でもあるから鍵がある。
だが、鍵は外から開けられる。
神父様に言ってもあるし、大丈夫だろうとは思うが、魔力を操作して… ドアノブ周囲の空気を固定し、ノブが回らないようにしておく。
ベッド脇の机に持ってきた物を置き、水を少し飲んで、やっと息をつけた。
さぁ、問題を整理しよう。
まずは急務な彼等の事だ。
あの2人はお忍びで城を出て、ヒロインに出会う。
乙女ゲームの…いや、恋愛シミュレーションゲームの、王道の1つ、実は幼い頃に出会っていた、という回想シーン。
それが昨日のアレだ。
神父様には何が見えているのかと思いもしたが、ゲームの強制力なのであれば不自然すぎる行動も納得だ。
勿論、本来の流れは、彼らが男達から子供達を庇い、守り、返り討ちにする。
その子供達の中に修導女姿の私もいて、互いの名さえ知らないまま別れ、それぞれの記憶の片隅に残る的な流れなのだが。
実際には私が返り討ちにした挙げ句、彼らの顔を見た次の瞬間には気を失うという、ある意味、衝撃的な出会いをしている。
記憶の片隅どころじゃない、出会い方ではある。
けれど、私が気を失った為、互いの名も知らない所は同じ。
ゲームの事前段階として用意されていたであろう展開は再現され、出会いフラグは成立しているのだろう。
……と思いはするが。
そこで終わっていない事が問題なのだ。
ゲームでは、彼等は私が何処の誰かなど知らないままゲームスタートまで過ごす。
だが、彼等は、私をこの孤児院まで運び、挙げ句、再び訪問するという。
しかも、お忍びだったはずなのに本名を名乗り、身分を明かしている。
これはゲームのストーリーから逸脱する行為だ。
勿論、出会いのシーンをぶち壊した私の行動も。
それは、強制力はあっても、完璧ではない、という事を示しているのではないか?
大体が、私自身が前世の記憶を持つというイレギュラーだ。
しかも、このゲームの考察組というアドバンテージ持ち。
思い返せば、記憶が戻る前から、前世の記憶は時折、顔を出していたように思う。
初めて見るはずの花を知っているような気がしたり、懐かしく感じたりすることがあった。
食事の際に、アレがあれば美味しくなるのに、と思ったり、こういう調理法の方が良いのではないか、と思ったりもした。
知識を得るようになれば、身の回りの小さな事から、掃除洗濯、果ては勉強の仕方まで、効率が良い方法を思い付いたり、考えたりすることも増えた。
そうやって、ふとした瞬間に顔を出すそれを、調べたり、実践したりを繰り返した結果が、今の私だ。
多分、ゲームのヒロインの設定より、成長の幅が広く、かつ成長が早い状況だろうと推測する。
そうでなければ、彼等の出番を奪うような展開に説明がつかないからだ。
つまり… 私自身の行動が、逸脱を招くのなら……
願ったり叶ったり、だ……!!




