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空の彼方に  作者: しまねこ


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目覚めとこれからの事

「うん……」

 横向きに眠っていた私は、何故だか体のあちこちが何だか痛くて不意に目を覚ました。

「あれ、ここ、何処……」

 ぼんやりしながら起き上がって部屋を見回した、目に飛び込んで来た光景に絶句した。

「嘘……夢じゃ無かった……」

 見えたのは、ガランとした何も無い石造りの広い部屋。

「うう、目が覚めたら全部夢でした〜! ってのを期待したんだけどなあ」

 大きなため息を吐いて体を起こした私は、そう呟いて天井を見上げた。

 ぽっかりと空いた壁の空間からは、朝の光が差し込んでいる。



 その時、軽い羽ばたきと共に、昨日の青い小鳥達が降りて来てくれた。

「おはよう、今日もいいお天気みたいね」

 笑って話しかけたが、なぜだか返事が無い。

「あれ? どうしたの? おはよう」

 もう一度、今度は小鳥達をしっかりと見つめながらそう話しかける。



「ピチュチチチチチチ!」

「ピュルルルチュルルルル!」

「ピチチチチチチチチ!」

「ピチュピチュチチチ!」



 賑やかに口々に鳴いてくれるが、全く言葉が分からない。

「ええ、どうしたのよあなた達。ねえ、お願いだから意地悪しないで昨日みたいに話してよ!」

 慌てて身を乗り出すようにして小鳥達を覗き込む。

 しかし急に動いた私に驚いたらしく、小鳥達は一斉に羽ばたいて逃げ出してしまった。

 壁に空いた空間と、扉も無い大きな入り口から外に飛び出していく小鳥達を呆然と見送る。

「ええ、どうして……」

 不意に感じた孤独感に目の前が真っ暗になる。

「そんな、どうしたらいいのよ……」

 どんな姿の相手であれ、言葉が通じる相手がいると言う事実にずいぶんと慰められていたのだと、今更ながらに気が付く。

 私はショックのあまり、しばらくその場に座り込んだまま放心していた。



 クウ〜〜〜。



 放心していた私は、突然鳴った自分のお腹の音に我に返った。

「あはは、どんな時でも腹は減るわけね。そうよね、生きてるんだもん。当たり前よね」

 半泣きになりながらそう呟き、意を決して立ち上がる。

「とにかく、何か食べよう。それで今日は……どうしようかなあ」

 葉っぱが散らかった即席の寝床を見て、とりあえず葉っぱを集めておく。

「切実にシーツが欲しいわ。お布団のありがたみを思い知るわねえ」

 小さくそう呟き、深呼吸をしてから外へ出ていった。



「ああ、パンの木発見!」

 建物から少し離れた場所に、数本のパンの木が集まっているのを発見した。

「よしよし、茶色も白もある。とりあえず一個ずつでいいかな」

 背中の翼を開き、地面を蹴るのに合わせて大きく羽ばたく。

 何度か上下して、無事に一個ずつ確保出来た。

「向こうに、あの赤い実がなってる」

 少し離れた場所に、あの真っ赤な木の実が鈴なりになっているのを見つけて駆け寄る。

 小さな石の上に座って、パンの実を食べ、真っ赤な実を摘んだ。

「よし、この赤いのはレッドベリーって呼ぼう。それからこっちはそのままパンの実だね。白いのは、白パンの実」

 しっかり食べて満足した私は、まだ顔も洗っていなかったのを思い出して水場を探して飛び上がった。



 上空から見下ろせば、建物のすぐ近くに小さいけど泉があるのを発見した。

 泉からは小さな小川が流れて森の中を突っ切り、遠くにある大きな川に合流している。そしてその大きな川が、そのまま浮き島の縁から滝となって流れ落ちているのも見えて、呆れたように考える。

「ううん、ここも綺麗な泉だけど。本当に水源はどうなってるのかしら?」

 降り立った直径1メートルくらいの小さな泉を覗き込みながらそう呟く。

 ここも泉の周りは砂場になっていて、泉の周囲からはこんこんと綺麗な水が湧き出している。

 少し考えて、泉から少し下がった小川の手前あたりで手と顔を洗った。

 それから水源に近い場所の水をすくって数回に分けて飲んだ。

「やっぱり甘くて美味しい」

 安堵のため息を吐いてもう一回水を飲み、少し考えてスカートの裾で手と顔を拭いた。

 仕方ないわよ、タオルなんてないんだもの。



「よし、決めた。当分ここをベースにして、まずは飛ぶ練習をしよう。それで自由自在に飛べるようになったら、まずはこの大きな浮島を探検しよう。誰かいればファーストコンタクトね」

 そう呟いて立ち上がろうとした時、泉の中で何かが光るのに気がついた。

「あれ?今何か光った?」

 泉の底まではごく浅くて、多分30センチくらいしかない。

 不思議に思って手を入れてみると、確かに何かに当たった。

「ええ? 何これ?」

 完全に透明だけど、間違いなく水中に何かある。

 泉の縁に膝をついて、私は腕をもっと突っ込んでみた。

「あ、掴めた」

 完全に透明な何かを掴めたので、そのまま持ち上げてみる。



「ええ、綺麗! 何これ!」



 それは、クリスタルガラスみたいにキラキラと太陽の光を受けて輝いている透明のガラスの塊みたいなのだった。

 その透明度は相当で、完全に向こう側が透けて見える。

 不規則なその形はガラスの塊を適当に割ったみたいだけど、鋭角の部分の先はどこも少し丸くなっていて危険は無さそう。

「綺麗。だけど、これはちょっと持ち歩くには大きすぎるわよねえ」

 なんとなく手放し難くてそう呟く。

 私が今着ているこのセクシーな背中から肩まで全開のワンピースはポケットが無い。当然鞄なんて持っていないので、物を持とうと思ったら手で持つしかない。

「ううん、どこかにしまえるところがあればいいんだけど、仕方がないわよ、ね……」

 ため息と共に、そのガラスの欠片みたいなのを水に戻そうとした瞬間、それは起こった。



 一瞬で、握っていたあの塊が何処かに消えて無くなったのだ。



「あれ? 落っことした……かな?」

 焦って周りを見回してあの透明なかけらを探す。

「位置的に見て、水の中に落ちたはずは無い。だけど、どこにも落ちていない……ええ? どういう事よ!」

 首を傾げつつ、もう一度水の中から別の塊を掴んで取り出してみる。

 そう、泉の中にはいくつもあの透明な塊が転がっていたのよ。

「さっきは、こうやって見ていて無くなったのよね」

 手の中にある、先ほどとは明らかに形が違うその塊を見つめる。

「ううん、消える様子は無い。あ、確かさっきって……」

 透明なそれを見つめながら、私は宣言するように声に出した。

「持っておきたいんだけど、どこかにしまえる場所があればいいのに!」



 予想通りに、一瞬で手の中にあった透明な塊が消えて無くなる。

「やっぱりそうだ! これって、もしかしてもしかしなくてもアイテムボックス的なあれよね〜〜!」



 拳を握って嬉々として叫ぶ私を、青い鳥達が怖がるみたいに少し離れた木の上から、寄り集まってくっつき合いながらじっと見つめていたのだった。

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