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空の彼方に  作者: しまねこ


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お昼ご飯と襲来

「お弁当だ〜〜!」

 太陽が頂点に差し掛かった頃、お昼休憩の為にあちこちに広がっていた子供達が集まって来た。

 皆、手を泥だらけにしていて中には何故か鼻の頭や額に泥をつけている子もいる。

「じゃあ先にルリさんに集めた分を渡してくださ〜い!」

 チムタム達の呼びかけに、数人分ずつ採取した球根を集めて年長組の子達が私のところに駆け寄って来る。

「ルリさん、お願いしま〜す!」

 いつも笑顔のちょっと太めのアンジー君が、得意げにパンパンに膨れた袋を差し出す。

 アンジー君はフクロウの羽を持つ子で、フクロウも大きな翼になるのだそう。だけどやや太り気味になる方が多いらしく、どちらかというと地上の留守番組で畑仕事や酪農に従事している人が多いんだって。アンジー君のお父さんも、畑仕事に日々頑張ってくれている。

 ちなみに、地上との取引の際に大きな荷物を手分けして運んでくれていた方なんだって。

「はあい、じゃあ預かるね」

 次々に渡される袋をせっせと収納して回り、全員分を集めたところで、今度は皆で交代しながら、収納していた手洗い用の水を出し合って手を綺麗に洗った。



「はい、これルリさんの分ね」

 チムタムが大きな包みを渡してくれる。

「ありがとう」

 受け取って、マイカップを取り出していつも使っている水石を取り出して、軽く弾いて水を出してカップに落とす。

「もう、こぼさずに落とせるようになったもんねえ」

 隣に座ったチムニーに水の入ったカップを見せながら得意げに胸を張って見せる。

「俺はカップなんて必要ないもんねえ」

 これまた得意げにチムニーがそう言って、上を向いて口の中に水石を弾いて水を落としてみせる。

「お行儀悪い子は誰だ〜〜〜」

 笑って脇腹をくすぐってやると、悲鳴を上げて笑いながら飛び跳ねてチムタムの後ろへ逃げる。

「そこは駄目なんだって!」

 脇腹が弱点なチムニーの必死の叫びに、私達は揃って吹き出したのだった。



「ううん、ワイバーンのハム美味しい!」

 パンの実に挟んだ分厚いワイバーンのハムに子供達は大喜びだ。

 私もチムタムと頷き合って、遠慮なく大きな口を開けてパンの実に齧り付いたのだった。

「午後からも、ここでまだ球根を採取するの?」

 お弁当はパンの実と白パンの実の二個で、どちらにも分厚いワイバーンのハムが挟まれていて、パンの実にはレタスが、白パンの実にはゆで卵の輪切りが挟んであってどちらも美味しい。

 二個目の白パンの実のハンバーガーを食べながら周りを見回す。

 掘り返したところはきちんと埋め戻してあるから穴ぼこだらけってわけじゃあないけど、あちこちに土が剥き出しになっててもう球根は掘り尽くしたと思われる。

「午後からはまた別の場所へ行くよ。あっちは島の端っこに近いからちょっと危険なんだ」

「島の端っこが危険なの?」

 不思議に思ってそう尋ねると、チムニーは背中のようやく羽が生え揃い始めたまだ小さな翼を広げた。

「以前、調子に乗って走り回って島から落っこちた子がいるんだよ。もちろんすぐに大人達が追いかけてくれて大丈夫だったんだけどね」

 驚く私に、チムニーが笑う。

「この話は採取に出る子供達が皆聞かされる話で、絶対調子に乗って走り回らない。島の端で採取する時は大人達がいる場所よりも向こうへは行かない、ってのが絶対の約束なんだ」

「そうね、それは大事な事だわ」

 初めてこの世界に来た時の事を思い出して、何気に島の端っこから下を見た時の、あの足がすくむ感覚を思い出してちょっと身震いした私だった。



「さて、じゃあ次へ行きましょうか。皆、次に行く場所は島の端っこだから、大人達がいる場所よりも後ろには絶対に行かない事! いいわね。落っこちても知らないわよ!」

「はあ〜〜い!」

 元気な子供達に返事が聞こえて、私はチムタムと苦笑いして顔を見合わせた。

「じゃあ行こうか」

 右手はチムニーと、左手は走ってきた小柄なライムちゃんが握って嬉しそうに笑う。

 どうやら右手がチムニーなのはいつもなんだけど、私の左手争奪戦が密かに子供達の間で繰り広げられているみたいで、ちょっと見ていて面白いのよね。

「よろしくね」

 今日の勝者のライムちゃんと笑顔で頷きあい、ライムちゃんの手を握ったピピちゃんも一緒に、またさっきの童謡の続きを歌いながら場所を移動して行った。



「次はここなのね。へえ、確かにあちこちにあるわね」

 到着した場所は見晴らしの良い草原で、少し離れたところに低木の茂みがあるだけで、近くに背の高い木は無い。

 足元のまばらに生えた草地の間には、教えてもらったあの細い芽があちこちから突き出しているのが見えた。

「じゃあ、頑張って採取してくれよな」

 警備のカース君達がそう言って手を振り、草原の奥へ走って行く。

「そっか、あっちが島の端っこな訳ね。じゃ危ないからこっちの方で採取しようっと」

 どうやら子供達も落ちるのは怖いらしく、心配していたような事態にはならず、皆大人しく採取に勤しんでいた。

 私は安全地帯を子供達に譲って、カース君達が守ってくれているギリギリの場所を主に回ってせっせと球根を集めて回った。



「ふう、これで一通りは採取出来たんではなくて?」

 ちょうど近くにいたチムタムにそう話しかける。

 草地だった場所は、あちこち掘り返されて土が剥き出しになっている。

 だけど数日もすればまた、草に覆われちゃうんだって。

「そうね、かなり集まったと思うから、また子供達の分を集めてもらえる?」

「了解。おおい、預かるから集めた分を持って来てくださ〜い!」

 手を叩いて大きな声でそう言うと、あちこちから元気な返事が返って来る。

 持って来てくれる大きな袋をせっせと収納して、ようやく終わって小さなため息を吐く。

「ううん、ちょっと腕が痛いわね。それに腰も」

 そう言いながら大きく腕を伸ばして思いっきり伸びをすると、無意識のうちに背中の翼が開いて一緒になって伸びをしてたわ。

「ううん、そろそろ飛んでみたいんだけどなあ」

 すっかり飾りになってる背中の翼を振り返って、ため息と共に小さな声でそう呟く。



「ルリ! 危ない!」

 その時、突然チムニーがそう叫んで力一杯私に飛びついて来て、そのまま私は仰向けに転んでしまった。

 不意打ちでまともに転んだため、ちょうど畳んだところだった翼を打ち付けてしまって本気で痛かったわ。

「ちょっと、いきなり何するのよ!」

 思わず手をついて起き上がって文句を言おうとすると、また引っ張って押し倒される。

「だから起きるな。危ないって!」

 切羽詰まった叫び声の直後、とんでもない大きな雄叫びが背後から聞こえて私は飛び上がった。



「ギョエエエエ〜〜!」

 金属を擦り合わせたような、あの鳴き声には覚えがある。



「ワイバーン!」



 ようやく状況を理解して叫んだ瞬間、頭上スレスレを巨大な影が一気に通り過ぎて行った。

 子供達の悲鳴と、大人達の叫ぶ声が聞こえる。

 私は突然の出来事に地面に転がったまま、チムニーを抱きしめてただただ震えている事しか出来ずにいたのだった。

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