表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
空の彼方に  作者: しまねこ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

46/69

思わぬ贈り物と爆弾宣言

「しっかり食べてるか?」

 声がして慌てて振り返ると、飲み物のカップを手にしたワルターさんとグレイさん、それからカステアさんの姿があって思わず食べていた手が止まる。

「ルリはこっちは?」

 側に来て座り、そう言ったワルターさんの手にある瓶は明らかにお酒っぽい。

「ええと、あまり強いので無ければ」

 まあ、ウイスキーストレートとかで無ければ多分大丈夫。

「お、いける口か。嬉しいねえ」

 笑ってそう言い、別のグラスにそれを注いでくれたのはちょっと白っぽい濁り酒。

「いただきます」

 笑顔で受け取り、ちょっとだけ口に含んでみる。

 爽やかな香りと軽めのアルコール。これは美味しい。

「美味しいです」

 私の言葉に嬉しそうに笑い、そこからは彼らも加わって一緒に食事を楽しんだ。

 キース君とカーク君が彼らの同席を喜び、ワルターさんやグレイさんの狩猟組での話を聞きたがって質問してくれたおかげで、私も一緒になって彼らが普段どんなことをしているのかを詳しく聞かせてもらった。

 その結果、思い知ったわ。

 ワイバーン怖い。

 ジェムモンスター怖い。

 私……ここへ来て初めての頃、よく無事だったわね。もしかしてチュートリアル安全バリヤーみたいなのがあったりした?

 彼らが怪我をした時の話を聞きながら、思わず本気でそんな事を考えた。




「今日、地上であったフレディの一件なんだけどな」

 三杯目のお酒が無くなる頃、ちょうど話題が途切れてカークくん達がまたお肉を取りに行ったタイミングで、カステアさんが遠慮がちに口を開いた。

「あの、私に掴み掛かろうとした人ですね」

 頷いたカステアさんが自分のお酒をぐいっと煽る。

「帰る前に聞いたんだが、何でも少し前に亡くなった彼の妹さんに、ルリがそっくりだったらしい。それで驚いて、本当にそこに存在しているのか確認しようとしたらしい。後で、大変な失礼をしたと言って何度も謝っていたよ」

「亡くなった……妹さん」

 思わずそう呟いて手にしたグラスを見つめる。

 ワルターさんとグレイさんも黙って話を聞いている。

「それで、詫びと言っては何だがこれを貰ってくれないかと言われて預かって来た。もし気に入らなければ捨ててくれて構わないとも言っていたが……」

 それは、とても綺麗な貝細工のペンダントだった。土台の木は漆塗りっぽくて、そこに細かく刻んだ貝殻が全面にわたって埋め込まれている。

 これって多分、あまり詳しくないけど螺鈿細工とかそういうのっぽい。しかもこれだけの細かな細工なら、かなりのお値段なんじゃないだろうか……。

 迂闊に受け取って良いかの判断がつかなくて困っていると、カステアさんが苦笑いしながらペンダントをそっと机に置いた。

「聞けば、本当ならその子の誕生日にプレゼントする予定だったらしい。貝細工は浮き島では手に入らないものだからな。まあこう言っちゃ何だがひと財産になる。嫌で無ければ貰ってやってはもらえないだろうか」

「良いんですか?」

 頷くカステアさんを見て、小さく深呼吸をした私はそのペンダントをそっと手に取った。

 ペンダントトップに取り付けられたごく細いチェーンも、細かな細工が入った二重の螺旋状になっていてとても綺麗。

 黙って手にしたそれを撫でてから首に回して後ろ手で金具を留めてみる。まるで誂えたみたいなちょうど良い長さ。

「よく似合ってるよ」

「うん! すっごくよく似合ってる! ルリ、綺麗!」

 カステアさんの言葉に続き、ポカンと口を開けて私たちの話を聞いていたチムニーが満面の笑みでそう言ってくれた。

「ありがとうね。でも良いのかしら。そんな値打ちもの貰っちゃって」

「良いに決まってる。ルリは何も悪くないのに怖い思いをしたんだから!」

 食べ終わった金串を持ったチムニーが、怒ったみたいにそう言って何度も頷く。

「そうだ。言ってなかったね。あの時真っ先に庇ってくれてありがとうね。格好良かったわよ」

「べ、別に、そんな、お、お礼を、言われる様な事じゃないやい! ってかからかうなよな! じょ、女性を庇うのは男として、あ、当たり前の事、なんだ、からさ!」

 唐突に真っ赤になったチムニーが、もの凄くつっかえながら叫ぶようにそう言って別の串焼きに齧り付いた。

 割と本気でそう言ったんだけど、残念ながらそうは受け取ってもらえなかったみたい。

「おうおう、ガキンチョが一人前の口をきいてるぞ」

 ワルターさんのからかうような言葉に、またチムニーが真っ赤になる。



「良いんだい! だってルリは俺がお嫁さんにするんだから!」



 もうこれ以上無いくらいの真っ赤になったチムニーが、食べ終わった金串を振り上げながら凛々しく宣言した予想外のその言葉に、その場は静まりかえってしまったのだった。

 呆気に取られて肉を咥えたままこっちを向いて固まってしまったキース君とカーク君。

 そして、黄色い悲鳴を上げてチムニーの背中や頭を叩くチムタムと彼女の友達達。

 そして、飲んでいたお酒を揃って噴き出したカステアさんとワルターさんとグレイさん。



 ええ!

 この状態を私にどうしろって?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ