バーベキューパーティ!
「ルリ〜〜! こっちこっち!」
満面の笑みで私に向かって手を振るチムニーの声に私も笑顔で手を振り返し、大急ぎでチムニー達のところへ走って行った。
「ほら、早く早く!」
そこは大きな肉の塊を今まさに焼いている場所のすぐ横で、チムニーの他にも何人もの子供達が目を輝かせて集まって来ていた。
肉の脂が炎に落ちて大きく爆ぜる。その度に、子供達の間からは歓声と拍手が上がっていた。
「まあまあ、これまた豪快なのね」
側へ行って覗き込むと、肉を焼いていたいつもは畑担当の大柄な男性が笑顔で振り返った。
「月に一度のお楽しみだからな。そっか、ルリちゃんはワイバーンの肉を食うのは初めてだな。そりゃあ美味いから、好きなだけ食うといい」
豪快に太い鉄の串に突き刺した肉を炎の上で回して焼きながら、その男性は笑っている。
「そろそろ第一弾が焼けるかなあ。ほれ、並んだ並んだ」
その人の言葉に歓声を上げた子供達が、先を争うようにして肉の塊の前に並ぶ。
「ほら、ルリも並ぶんだよ」
大きなお皿を持ったキース君とカーク君が私の腕を叩いて子供達の後ろに一緒に並ぶ。
「ええ、私も並んでいいの?」
一応私は大人なのに、子供達と一緒に並んで良いのだろうか?
不安になって周りを見回すと、いきなり目の前に大きなお皿を突き出された。
「はい、これはルリのお皿ね。いいから遠慮せずに好きなだけ食べてちょうだい。おすすめはこの塊肉だけど、向こうの味付き肉と串焼きも美味しいわよ、焼いた肉をパンの実に挟んで食べるとまた違った楽しみ方が出来るから、お腹に余裕があればやってみてね」
片目を閉じたパムに笑顔でそう言われて、お皿を受け取った私も笑顔になる。
「何言ってるんだよ! そんな勿体無い事してたまるかよ。ルリ。いいから今日は肉を食うんだよ! パンの実なんて腹が膨れるもん食ってどうするんだよ!」
何とも食欲に忠実な言葉に思わず吹き出す。隣ではカーク君とキース君も揃って大きく頷きつつも大笑いしている。
「ルリ〜〜〜! もう食べてる?」
その時、チムタムと彼女の友達の声が聞こえて揃って振り返る。
彼女達は、両手に持った大きなお皿に山盛りの串焼き肉を積み上げてこっちへ歩いてくるところだった。
「ああ、姉ちゃん! それ、俺の今からもらう肉と交換してくれよな!」
「うん、そう思ってたくさんもらって来たからね」
「今、ロアとオリーブが味付き肉に並んでくれてるから、それも交換しようってさ。これだけあれば、まずは充分食べられると思うわ」
「何言ってんだよ。そんなのすぐ無くなるに決まってるじゃん。なあ!」
「分かった分かった。好きなだけ食べていいからね」
私はそこまで食に対して執着心があるわけなじゃい。まあ美味しいものを食べられたら嬉しいとは思うけど、他に食べたがってる子がいるのなら、譲ってあげる事を躊躇わないわよ。
そんな話をしている間にどんどん列は進み、もう私達の番になった。
「悪いけどもうちょい待ってくれよなあ。焼けたところが無くなっちまった。いやあ皆気持ち良いくらいに食ってくれるなあ」
笑ったその男性が焼いているその肉は、確かにさっき見た時よりも一回り小さくなったみたい。どうやら焼けた部分をそぎ切りにして渡してくれるみたいで、またお肉をぐるぐると回して焼き始めた。
香ばしいスパイシーな香りにお腹が減ってる事を自覚する。
「ううん、香りだけ嗅がせてお預けなんてひどい!」
思わずそう呟くと、肉を焼いてる男性は吹き出して大笑いしていた。
「ほれ、お待たせ。遠慮なく食ってくれよな」
しばらく待って、焼き立ての肉の塊から驚くくらいに沢山の肉を切ってくれた。
もちろん私にだけじゃなくて、他も皆のお皿も山盛りになってる。
まあ、元の肉の大きさが普通じゃないから、当然一度に切れる肉の量も凄い事になってるわけ。
「足りなかったらまた並んでくれよな」
最後の一番大きな一切れをお肉の山の上にさらに積み上げてくれたその男性は、笑って手を振りまた肉を焼き始めた。
「ありがとうございます!」
笑顔でお礼を言って、チムニーに服を引っ張られて別の場所にあるテーブルへ向かった。
「ほら、食べよう!」
笑顔のチムニーの言葉に頷き、私も椅子に座る。
机の上には、大きなコップに突っ込んだカトラリーがあちこちに置かれているからこれを使えって事なんだろう。
それから机の上に各自が取ってきたいろんなお肉が乗ったお皿を並べる。
一体何人前なのと言いたくなるようなもの凄い量の肉の山を見て、もうそれだけでお腹がいっぱいになりそうでちょっと笑っちゃったわ。
「美味え!」
一番最初にそう叫んだのは、自分が取ってきたさっきのそぎ切りのお肉を一口で食べたチムニーだった。
「いただきます」
手を合わせて小さく呟き、私も同じくそぎ切りのお肉を小さく切って口に入れる。
そのお肉は、口の中でとろけるみたいにあっという間になくなってしまった。
「ええ、何これ!」
思わずそう叫んでしまったら、隣にいたチムタムとチムニーが揃って満面の笑みになった。
「な、な、な! めっちゃ美味いだろう!」
「うん、めっちゃ美味しい!」
得意気なチムニーの言葉に、こちらも満面の笑みで大きく頷いてサムズアップを返す。
これはまさに、国産和牛のA5ランクの最高級霜降り肉レベルよ。
しかもこのスパイシーな香りの素晴らしい事!
大きく深呼吸をした私は、そこからはもう夢中になっていろんなお肉を食べまくったわ。
しかも、カーク君とキース君が交代であちこちへ行ってまた山ほどお肉を確保して戻ってきては皆に配ってくれるもんだから、もう途中からはどれくらい食べたのか分からなくなるくらいにひたすら食べていたわね。
子供達も大喜びで沢山食べてるし、少し離れた机ではグレイさん達狩猟組の人達も集まっていて、こちらはお酒を片手に山盛りのお肉を楽しんでいるのに気が付きそっちを振り返る。
「ルリ〜〜食べてるか〜〜」
私の視線に気がついたワルターさんが、ちょっと赤くなった顔でそう言って手を振ってくれる。
「いっぱい食べてますよ〜〜!」
笑顔で手を振り返して、またいつの間にかお皿に乗せられていた味付き肉を口に入れたのだった。




