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空の彼方に  作者: しまねこ


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着替えと脱衣所

「うわあ、色々入ってるわ」

 言われた引き出しを開けてみると、そこには真新しい下着をはじめいろんなサイズの服が綺麗に畳まれて何枚も収められていた。

「ええと、どれを使わせて貰えば良いのかしら?」

 少し考えて、まずは下着を探す。

「ショーツは……これにしよう」

 並んでいるそれは、どこからどう見てもいわゆる紐パン。しかも、どれもかなり布面積が小さなかなりセクシーなものだったんだけど、冷静に考えたら伸縮性のあるニット生地じゃなければ、こうするより他ないのかもしれない。

 そう考えて、まだその中でも出来るだけ布面積の大きそうなのを取り出す。

 それからふんわりとしたワンピースを取り出してみた。

「ううん、やっぱり背中から肩にかけて全開だわ。でもこれも翼がある事を考えたら当然なのかもね」

 色々と諦めのため息を吐いて、他にないか引き出しの中を覗き込む。

「ああ、これは絶対にいるわよね」

 今履いているのと同じような、淡い色のレギンスもどきを見つけて引っ張り出す。

「空を飛ぶ事を考えたら、下半身をしっかり保護するこれは必須アイテムよね」

 苦笑いして、それも取り出してワンピースと一緒に置いておく。



 スカートの中がセクシー紐パンだけでうっかり飛んで、もしも誰かに下から覗かれたら……絶対立ち直れない。色々恥ずか死ねるわ。



 一人で悶絶していると、軽いノックの音がして慌てて振り返る。

「下にいないからどうしたのかと思ったじゃない。どう? 合うサイズはありそう?」

 笑って手に包みを持ったリッティが部屋に入ってくる。

「ええと、こんな感じで良いですか?」

 取り出した服を見せてそう尋ねる。

「ああ、ごめんなさい。説明不足だったわね。こっちの服は外に出る時用だから、今から着るならこっちね」

 笑って引き出しの別の列を示してくれる。

「寝る時用の服と、普段着る服の二種類があるのね」

 納得してそちらを見てみると、先程の服よりも確かに生地が薄くてとても柔らかそう。

「じゃあこの辺りかしらね。ええと、下に履くのは……これ?」

 そこにあったのは、ふんわりワンピース風のパジャマと、まさかのかぼちゃパンツ!

「そうよ。寝る時は大体こんな感じね」

 リッティさんが持っていた包みを見せてくれたけど、似たような服が入っていたわ。

「そう言えばちょっと大きそうだけど……サイズは合うかしら?」

 この世界ではブラが無いみたいなので、はっきり言って身に合わないサイズの服はかなり危険。要するに、横から見たら色々丸見えになっちゃうって事。

 一応、広げて当ててみると予想通りにかなり大きそうで、明らかに私には危険サイズだったためにそのまま無言で引き出しに戻したわ。



「あらあら、ちょっとどれも大きそうね。じゃああなたならこっちかしらね?」

 それを見たリッティが苦笑いしがらそう言ってもう一段下の引き出しを開けると、そこにはさっきよりもサイズが小さめの服が綺麗に畳んでこれまたぎっしりと入っていた。

「ああ、こっちなら大丈夫そうね」

 笑ってそう言い、さっきと同じようなデザインのふんわりワンピースとかぼちゃパンツを取り出した。



「それじゃあ、まずは水浴びに行きましょう。それから、あとでここに入ってる布や予備の着替えは別の場所に移すからね。水浴びから戻ったら、自分の分を確保しておいてね」

「そうなのね。ええと、どれくらい貸して貰えばいい?」

 すると、目を瞬いたリッティは振り返って私を見て、それからまだ開けたままだった引き出しに入ってる服を見た。

「ここにあるのは、留守番組の縫製班の子達が作ってくれた服よ。だから好きに取ってくれて構わないわ。洗濯は水場で各自する事。やり方も教えてあげるからね」

 そう言って軽々と開いたままだった扉から飛び降りる。

 慌てて後を追いかけて、羽ばたく音がして苦笑いして立ち止まる。

「ううん、ここは翼がある人達の住む場所なんだって、つい忘れそうになるわね」

 小さくそう呟いて首を振った。



 私は飛べない。

 幼い時に身をもって思い知らされたその事実は、長い間私を縛り続けていた。

 今、理由は分からないけれどもこうして背中に翼をもらい自由に飛ぶ事を許される世界にいるのに、まだ私の頭の中は、飛べない不自由な世界に縛られている。

「私はここで頑張るの。大丈夫、あんなに恋焦がれた翼が私にはあるんだもの」

 自分に言い聞かせるようにしてそう呟いた私は、着替え一式を丸めて抱え、さっきのリッティのように開いた扉から軽々と飛び降りた。



 大きく広げた翼を二回羽ばたかせただけで、ふわりと私の体は床に降り立った。

「お見事。コントロールもかなり出来るみたいね」

 嬉しそうにそう言うと、私の手を引いてそのまま奥にある別の扉へ向かって歩き出した。




 扉を開いて入った部屋は温泉や銭湯にあった脱衣所そのもので、広い部屋の奥にある壁一面に大きめの棚が作り付けられていて、そこには空っぽの籠がいくつも並んでいた。

「ここが脱衣所よ。着替えはそっちの棚にある籠へ置いておくと良いわ。それで脱いだ服はついでに水場で洗うから、持って入ってね」

 にっこり笑ってそう言うと、リッティはさっさと服を脱ぎ始めた。

 大柄な彼女は、はっきり言って砂時計体型。出るべきところはしっかりと出て、締まるべきところはこれ以上ないくらいに引き締まっている。

 若干、視線のやり場に困りつつ、私も着ている服を黙って脱いだ。

 背も低く、痩せっぽちCカップの自分がちょっと悲しかったわ。しかも、やっぱり記憶にある自分の体よりも全体に小さくなって縮んでる気がする。

 ううん、納得出来ない。どうしてなのよ!



「じゃあ行くわよ」

 当然のように服を全部脱いだ彼女は、それを丸めて持ったまま奥にある別の扉へ向かって歩き出した。

「ああ、待ってください!」

 諦めのため息と共に下着も全部脱いで同じく素っ裸になった私は、何となく翼を広げて痩せっぽちな自分の体を隠しつつ、彼女の後を追いかけて小走りに扉へ向かった。

 さあ、水浴びする場所って、どんな風なのかしらね?

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