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空の彼方に  作者: しまねこ


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19/98

仕事の内容と不安

「ねえ、リッティさん、ちょっと聞いてもいいですか?」

「ええ、もちろん。ああ私の事もリッティでいいわよ。さん付けなんて改まって呼ばれると何だか照れ臭いわ」

 苦笑いしながらそう言われてしまい、私も笑ってこれからはリッティと呼ばせてもらう事にした。

「じゃあリッティ、ええと、ちょっと気になったので質問なんだけど、その子供達の警備組の人が減ったのってどうして? 何かあったの?」

 若干不安になってそう尋ねると、横で一緒に聞いていたパムが一瞬目を見開いた後に笑って首を振った。

「ああ、大丈夫だから心配しないで。成長して大きな子達が増えてきたから狩猟組に移動してもらっただけよ。子供組の警備担当は、だいたい十代後半くらいまでの子達が中心になってくれてるんだけど、ある程度の経験を積んだら順番に狩猟組へ移ってもらってるの」

 笑ったパムの言葉に、リッティも一緒に笑ってる。

「その狩猟組って、グレイさんやワルターさんがいるところですよね。そこは何をするところなの?」

 採集組が食料を採集するのなら、狩猟組は、何を相手に狩りをするのだろう?

「ああ、狩猟組の主な仕事は、まず定期的に、食料になる水鳥を狩る事。それから時折水場に現れるジェムモンスターのファングワームやキラーバグなどを狩ってジェムを回収する事。それから、一番重要で危険なのがワイバーンへの対応ね」



 パムのその言葉に、私は初めてここへ来た時のあの青い鳥達を思い出した。

 あの鳥達は、夜になるとあそこには危険なジェムモンスターが現れると言ったのだ。



「ええと、まずそのジェムモンスターって何ですか?」

 分からない事はとにかく聞いてみる。

「何って……ああ、もしかしてルリのいた世界には、ジェムモンスターはいなかった?」

「初めて聞きました」

 なんとなく予想はつくけど、少なくとも実際に存在しているのは知らない。

「核にジェムを持つモンスターの総称よ。地上にはもっと種類がいるらしいけど、浮き島にいるのは、今言ったファングワームとキラーバグ、それからポイズンマウス。後はこの島にはいないけど、別の浮き島にはホーンラビットがいるわね」



 その言葉を聞いて考える。



「ええと、最後のホーンラビットって事は、角のあるウサギ?」

 恐る恐る尋ねると苦笑いしながら揃って頷く二人。

「まあ、間違ってはいないわね。大きさはこれくらいで、とにかく素早くて凶暴。武器や防具を身に付けずには会いたくない相手ね」

 そう言って、リッティが両手を軽く広げて見せる。

 怖い、中型犬サイズは余裕でありそう……絶対会いたくないわ。



「ポイズンマウスはこれくらいの体に、同じくらいの長い尻尾があるネズミのジェムモンスターよ。とても臆病だから、出会い頭にぶつかりでもしない限り攻撃して来る事はほぼ無いと思っていいわね」

 そう言って、だいたい50センチくらいの幅に両手を広げて見せる。

 あのサイズのネズミ……例え臆病だから大丈夫と言われても、これも絶対会いたくない。

「ただし、毒牙があるから万一噛まれたら大至急処置をしないと命に関わるわ」

「薬はあるの?」

「もちろん。これも採集組の担当だから、皆から教えてもらってしっかり集めて来てね。集めてくれれば、調合担当が薬を作ってくれるからね」

 パムの説明に大きく頷く。

 成る程、採集するのは食料だけじゃなくて薬もなのね。これは責任重大だわ。



「一番遭遇する可能性が高いのが、ファングワームとキラーバグね。まず、ファングワームは、太さはこれくらいで長さはこれくらい」

 そう言って、パムは両手を広げて1メートルくらいの位置で止める。そして太さは直径40センチくらいの円柱を両手でかたどって見せる。

「お、大きいのね」

「見た目は芋虫みたいなんだけど、子供の腕くらいある巨大な二本の牙があって、これが厄介なのよね」

 もう、それを聞いただけで、割と本気で泣きそうになってるんですけど。

「ファングワームの主食は苔だから、泉周辺に出現する事が多い。厄介なのは、こいつらは私達の羽を齧るのよ」

 そう言って、翼の風切り羽を軽く引っ張って見せる。

 驚きに目を見開く私に苦笑いしたパムは、翼を戻してため息を吐いた。

「まともに襲われたら、あっという間に翼を丸裸にされてしまうわ。そうなったら飛べなくなってしまうから最悪の場合命に関わるわね。もし奴が飛びかかってきたら、絶対に距離を取ってとにかく逃げてちょうだい。奴らは飛び跳ねて反動をつけて襲いかかってくるから、急に逃げる方向を変えたりするとすぐには対応出来ないのよ。だからとにかくジグザグに逃げて、距離が取れたところで矢を射るかナイフを投げて仕留めるのよ。もちろん、剣で斬りかかるのもありだけどね」

「で、出来るかなあ……」

 完全にビビる私を見て、二人は顔を見合わせて苦笑いしている。

「気持ちは分かるけど、これはもう慣れてもらうしかないわね」

 絶対慣れたくなんかないけど、ここで生きる以上避けては通れない相手みたい。

 諦めのため息を吐く私を見て、リッティが手を伸ばして腕を叩いてくれた。



「キラーバグ、これも採集組は遭遇する可能性が高いわね。見かけは大きな甲虫よ。大きさはこれくらい」

 そう言って両手を広げて30センチくらいの幅で止め、15センチくらいの細長い姿をかたどる。

「これは私達に攻撃して来る事は無いんだけど、大事なパンの実の木を齧るのよね。だから見つけ次第駆除しないと、あっという間に枝ごと落とされて実が成らなくなるし、最悪の場合には木が枯れてしまうわ」

「パンの実って、さっき食べたあの白と茶色の丸いのね」

「そうそう。あれがパンの実よ。ちなみにパンの実と言えば茶色の事で、白いのは白パンの実って呼んでるわね」

 私が勝手に呼んでた呼び名がそのままだったわ。

 ちょっと笑って頷き、キラーバグは巨大なカミキリムシだと思う事にする。

 うん、これも会いたく無いかも……。



 今までの生活で、犬や猫なら好きだったけどペットを実際に飼った事は無いし、昆虫やネズミなんて、普通の小さなサイズでも正直言うと関わりたくない。

 だけどどうやらこの世界で生きる以上、リアルモンスターサイズのそれらと本気で戦わなければいけないみたい。

 それを考えて、ちょっと泣きそうになった私だったわ。

 これからここで本当にやっていけるのか、本気で不安になってきたんですけど……。

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