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空の彼方に  作者: しまねこ


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涙と戸惑い

「あの……」

 言いかけたまま、固まってしまった私を見て、大柄な女性が目の前にしゃがんでくれる。

「お願いだから泣かないで。大丈夫よ」

 優しい声でそう言われた途端、またしても私の涙腺は崩壊した。



 自分でも、恥ずかしいくらいに感情のコントロールが出来ない。しかも、今度は本当に子供みたいに声が出る。

 恥ずかしいし泣き止もうと思うんだけど、どうしても涙が止まらない。

「違うんです。グレイさんは、グレイさんは、私を、たす、けて、く、れ、て……」

 しゃくりあげつつ、必死になってそれだけは訴えようと言葉を紡ぐ。

 だけど出てくる言葉は切れ切れで、多分側で聞いてても意味不明だろう。



「彼女の名前はルリ。それだけは聞き出せた。いきなりワイバーンのテリトリーのど真ん中に、俺達の狩りの直前に飛び込んできたんだ」

 大きなため息と共に、グレイさんが口を開く。

「さすがに見殺しには出来なくて、咄嗟に捕まえてその場から離脱した。だが、怖がられてろくに話も出来なかったんで、とりあえず姉さんとなら話が出来るかと思って連れて来たんだ。だが、まさかそこまで泣かれるとは……すまん。本当に怖がらせるつもりは無かったんだ。頼むから泣き止んでくれ」

 心底申し訳なさそうなその声に、必死になって首を振る。

「分かって、ます。助け、て、くれ、たって」



 私の言葉に、ざわめく他の人達。

 全然余裕が無くて周りを見ていなかったけど、さっきからずっと、広間にいた人達全員から大注目浴び続けていたらしい。

 唐突にその事に気付いて襲ってきた羞恥心に真っ赤になる私。

「ああ、とにかくこっちにいらっしゃい。立てる?」

 そう言いながらそっと手を引いて立つ手助けをしてくれる。

 気付いてなかったけど、いつの間にかまた座り込んでいたみたい。

 何とか震えながらも立つことが出来た私を見て、安堵したみたいに小さくため息を吐いた彼女は、顔を上げて私の背後を睨みつけた。

「彼女に何をしたのかは、後でゆっくり聞かせてもらうわ。覚えてらっしゃい」

「いや、だから俺達は……」

「違うんだって。落ち着いて話を聞いてくれよ」

 グレイさんとワルターさんが、焦ったみたいに同時に口を開いて同時に黙る。

 その時、周りで見ていた人達に中から、年配の男性らしき人が進み出てきた。



「待ちなさい。どうにも話がおかしい」



 ゆっくりと話すその声は、低くて包み込むみたいな優しい声をしている。しかし、詰問調であることに変わりはない。

「その子の翼は明らかに成人のものだ。小柄だからてっきり雛鳥だと思っていたが、それで成人だとしたら、一体どこの集落の者だ? 身綺麗な様子を見る限り、野良ではあるまい」

「仮に野良だとしても、少なくともこの浮き島群島にいる野良なら、俺達は全員把握している。彼女は、ルリは野良ではない」

 グレイさんが断言するのを聞きながら、私は、野良って何だろう……野良猫みたいなものかな? と、半ば他人事みたいに呆然と考えていた。

「ねえ、ルリ。あなた、いったい何処から来たの?」

 だからそんな事聞かれても分からないので答えようがない。困ったみたいに首を振ると、彼女も困ったみたいに眉を寄せる。

「じゃあ、質問を変えるわ。あなたの種族は?」

 これも答えようが無いので。首を振る。

「言いたくない?」

「……知りません」

 消えそうな声で、何とかそう答える。

「そんな訳があるか! 翼人(よくじん)にとっては、当たり前に知っている事だぞ!」

 背後から、知らない誰かに怒鳴られて、咄嗟に頭を抱える。

「ああ、もう怒鳴らないで。やっと答えてくれたのにまた怯えちゃったじゃない!」

 私の腕を何度も撫でながら、怒ったみたいに彼女が怒鳴る。

「だって、そうだろうが。自分の種族を知らない翼人なんて有り得ないぞ」

 さっきの男性の大声に、私は震えながらも必死になって顔を上げた。

 ここで怯えてうずくまっていても、最悪の事態以外にならない気がしてきた。

 それなら、今のうちに少なくとも自分の置かれた現状を訴えてみようと思ったのだ。



「だって、何も分からないんだもの!」

 震えながらも、必死の大声でそう叫ぶ。



 広間が水を打ったみたいに静まり返る。

「分からない?」

 彼女の問いに、黙って頷く。

「気がついたら、苔の生えた場所に倒れてて、背中に翼があって……」

 言いかけて、あまりにも非現実的な説明に言葉が止まってしまう。もう、自分でも嫌になってきた。

 しかし、また背後から今度は戸惑うみたいな声が聞こえた。

「まさか。落ちてきたのか?」

「まれびと……か?」

 一気にざわめきが大きくなる。

「まれ、びと、って?」

 何とか息を整えながら、目の前の女性に尋ねる。

「もしかして、わざわざ背中に翼があって、って言うって事は、あなたの背に元々は翼は無かった?」

 核心に迫る質問だったが、色々諦めた私は無言で頷いた。

 いっそう背後のざわめきが大きくなる。

「本当にそうなのか? だが、翼のあるまれびとなんて初めて聞くぞ?」

「だけど確かにあの翼の色も形も初めて見る。じゃあ彼女の種族が何なのか、お前に答えられるのかよ」

「知るかそんな事。おそらくセキセイインコか、カナリアあたりの混じり子じゃあないのか?」

 最初に怒鳴った男性の言葉に、あちこちから反論の声が上がる。

 いわく、翼の形が明らかにカナリアでは無い。セキセイインコにしては風切り羽が大きすぎるなど、私には分からないが彼らには翼を見ればある程度の種族の見当がつくらしい。

 しかし、それなのに私の翼が何なのか分からずに、彼らも戸惑っているみたいに見えた。

 私の目の前の彼女も、困ったみたいに私を見てため息を吐く。

 何処から説明したら良いのか分からなくて戸惑いつつも、必死になって頭の中で説明の仕方を考える私だった。

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