表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/22

創造神、フルハの懇願

最初にしては結構書けたと思っております。…あくまで個人的にはですが!!

創造神は初めに軽く礼をして透き通るような声で話し始めた。


「改めまして、この世界の創造神、フルハと申します。本当はもっと長いのですが、それは後々でいいとして…あ、あと疑問に思ったことがあれば声に出さずとも念話で構いません」


〈なるほど、こんな感じですか?〉


「ええ、問題ありません」


…この念話含め、今でも夢のように感じるが、どうも意識がはっきりしているので、現実なのだろう。


〈それで先程の続きなのだが、私を呼んだ理由を簡単に教えてくれませんか。〉


「はい。単刀直入に言いますと、貴方の魂が私が幾千年と探していた中で最も輝いていて、神に対抗しうる器だった、ということです」


〈…それはまた、突拍子もない話ですね。私としては周りの人と何ら変わらないと思っていたのですが。〉


「それは貴方の住んでいた世界の人々は皆、私の創造した世界の中でも圧倒的に優れた魂が集まった世界でしたからね」


〈……え?どういうことですか?〉


「あの世界……地球を創る際、油断してくしゃみをしてしまい……必要量の数十倍の神力を注ぎ込んでしまいまして……本来そのようなことをすれば、世界は耐えきれず崩壊してしまうのですが、なんとかその後持ち直して問題なく創ることができたんですよ」


……この神は本当に神なのか?よく知らないが普通そんな数十倍もうっかり注いだりしないだろ。大丈夫か、この神は。


そんな考えが顔に出ていたのか、慌ててフルハは付け足した。


「で、でもその偶然のおかげで貴方含め地球の住民は高い水準の魂を持つことができたのですよ?まあ、ただ力が強すぎるので地球には他とは桁違いの負荷をかけていますが」


なんだって!だとしたら!


〈なんですって?それじゃあ俺が朝学校がだるいなと思ったり、全速力で走るとすぐ疲れるのは、その負荷を神様がかけていたせいなのですね?〉


責めるような目線で問い詰めると、これまた慌てて早口に言葉を紡ぐ。


「そ、それは世界が貴方たちの力に耐えきれなくならないようにするため、仕方なく行った処置です。それに、負荷をかけてやっと他の世界の住民と同程度の力になったのです」


うーむ、あまり納得いかないが、まあいいか。かなり脱線してしまった気がする。本題に戻ろう。


〈で、私が選ばれた理由はだいたいわかりました。私は何をすれば良いのですか?〉


するとあからさまに安堵した様子のフルハは、次の瞬間には真剣な顔となり、話し始めた。


「貴方には、ある世界へ行ってもらいます。その世界の名は『バイルーク』。いわゆる異世界転移です」


〈…そこで何をすれば?〉


「……断らないのですね」


〈貴方でしょう?私の元の世界に関する大事な記憶を消したのは。いや、薄めたと言った方が正しいか〉


「ーーッ、」

その瞬間、フルハの表情が強張った。


そう、俺は今通っていた学校名、家族、自分の名前でさえも、()()()()()()()()()()()のだ。さっきまで考えもしなかったが、よくよく考えれば異常だ。きっと、疑問に思わないように何かしら妨害もされていたのだろう。


〈大事なことを思い出せなくすることで、元の世界への未練を断ち切り、異世界に行かせやすくする。そういう魂胆だったんですね〉


「……はい、仰る、通りです」


瞬間、怒りを覚えた。何故そのようなことをするのかは、分かる。俺は数千年待ち望んだ存在らしいから絶対に引き留めなくてはならない。理屈は分かる。だがーー


〈騙そうとしていた方を、信用できませんね。それに、とても不愉快です〉


神に対する発言ではないだろう。だが、俺はまだ子供だ。駄々だってこねる。それにーー


家族のことを忘れさせられたのは、本当に許せなかった。


記憶はもう、無いに等しいのに、それでも怒りを感じるということは、それほど俺にとって大切な存在だったのだろう。


そんな思考に耽っているといきなりふわっと、心地よい香りがした。驚き目線を上げるとーー、


フルハが、創造神が、深々と頭を下げていた。


「本当に、本当に申し訳ありませんでした。ですが、貴方にバイルークに行っていただけなければ、あの世界は滅んでしまうのです」


俺はあからさまに動揺した。悪い神ではないとは、初対面の時、瞬時に感じた。きっとだからこそ、あのように怒りをぶつけることもできたのだろう。


…少し、頭を冷やすか。


〈いえ、私も言い過ぎました。申し訳ありません。それで滅んでしまう、というのは?〉


フルハは少し目を瞠ったあと、小さく頷いた。


「貴方は、ファンタジーに興味はありますか?勇者と魔王が戦ったりする」


〈ええ、知っていますが…〉


それにどんな意味があるのだろうか?


「貴方に行ってもらう世界は、そんな世界です。ーー表上は」


〈……どういうことでしょう?〉


「実はその世界では裏で勇者と魔王、そしてその世界の民たちを争わせることを愉しむ神、『嘲悦神(ちょうえつしん)』が存在しているのです」


なんだそれ。すっげーやな奴じゃん。


「その神は、どこから現れたかは分かりません。ですが、存在は確認済みです。私もかの者を消滅させようとしたのですが、その者の邪気が強すぎて浄化できなかったのです」


〈創造神様でさえ?ならば私にはどうも出来ないでしょう〉


すると、フルハは薄く微笑み、その問いに応えた。


「先ほども言ったでしょう?貴方は数千年探して見つけた、最も輝く魂をもっている、と」


〈たしかに、そう言われましたが……それにどんな意味があるのですか?〉


「その者は、神という部類に入るのですが、そういった者は原則、天界にいなければならないのです。地上に直接顕現すれば、地上が保ちませんから」


〈なるほど、……!ということは、まさか…!〉


「貴方の思っている通り、その者は、地上にいるのです。正確には、地上といっても少し次元が違うところにいるんですけどね。ゆえに、私は介入することがほとんどできない状態だったのです」


〈だから浄化出来なかったのですね。でも、そのクズも神なのでしょう?それじゃあ地上が保たないんじゃ……〉


そんな神に敬称はいらない。クズで十分だ。


するとそんな心情を読み取ったのか、フルハは苦笑した後、説明してくれた。


「先ほど申し上げた通り、その者は正確には地上ではなく、近いところにいる、ということです。そこに新たな次元を勝手に創り、世界が簡単に崩壊してしまうのを抑えているのです」


〈簡単に、ですか。じわじわと壊していくつもりなのでしょうね〉


「ええ、そうなのでしょう。実際、すでに少しずつですが、崩壊が始まりつつあります」


〈……私はどうすれば……?〉


「貴方には、私の直属の隠密として嘲悦神を消滅させ、世界の崩壊を止めてほしいのです。貴方の魂は他の魂より遥かに優れているので、私の神力を渡しても地上に影響が出ません。また、貴方自身の力も桁違いなので、万が一の際私が神力を渡せなくとも十分戦闘力もあります」


な、なるほど……それは確かにすごいな。嘘を言っているようには見えないし…というか、さっきも別に嘘をついてはいなかったが。


〈……それは、私にしかできないことなのですね〉


するとフルハはすこし表情を伏せながら呟いた。


「…そうです。ですが本来なら私が対応しなければならないこと。その上、異世界転移の条件で未練があっては転移中に自我が崩壊してしまうという事もあり、貴方の大切な記憶を薄めました。……嫌であれば、行かなくて結構ですし、記憶もーー」


〈行きます〉


「ーーーえ?」


ひどく驚いた顔をしたフルハを見ながら、少年は微笑んでいた。


〈私しか、いないのでしょう?救えるのは。あまり覚えていませんが、きっと…いえ、絶対に私の家族は《行ってこい》と言うでしょう。私も、できることをしたい〉


「わ、私から言っておいてなんですが、本当に良いのですか?貴方は最初、嘲悦神に気づかれないよう影から勇者と魔王の衝突を回避させなければならない。それは、無理難題と言っていいほど難しいことです。それでも、良いのですか?」


〈今更でしょう。やりますよ。てわけで、軽くあっちの説明をお願いします〉


フルハはあまりにあっさりと受けると言った少年にアタフタしていたが、しばらくすると、本気で言ってくれていると理解し、あちらの世界、バイルークについて軽く説明した。


「では、いってらっしゃいませ。詳しいことは現地でその都度説明します」


〈わかりました。では、行ってきますね〉


そして、次の瞬間に少年は光に包まれ、白の空間にはフルハだけが残っていた。





面白いと思ったらブックマークに登録してもらえると嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ