制服を作ろう
その後、ラバン王国からフォレスト神聖国へと移動を始めたセツガ以下覇月隊。
ラバン王国王都の周りには、北から東へと連なる山脈地帯、西に山岳地帯、南に大草原地帯が広がっている。
他国との貿易路は必然的に1番安全な南側の大草原地帯となり、多くの商人や冒険者がラバン王国に着くまでに宿泊や買い物ができる町が多くある。
と、いう話を別れる前サリーヌたちに教えてもらった。
ちなみにセツガたちが転移してきたのは、ラバン王国王都西側の郊外だ。
「ん?じゃあなんで王女たちは山岳地帯からやってきたんだ?」
「調べて参りましょうか?」
セツガの疑問に、リンが提案する。
「……そうだな。では第三部隊員五名をラバン王国へ派遣してくれ。集合時には念話をつかう」
「御意」
その後リンが5名を自身の隊から選ぶ。5名はセツガと副長2人に一礼すると、転移を使い、ラバン王国王都へ向かった。
それを確認するとセツガは生体・魔力探知を半径5キロほどで放った。
「………どうやら半径5キロには誰もいないようだ。というわけでこれから傭兵団の制服を作る!」
今覇月隊はみんな漆黒の戦闘服を着ている。どう見ても暗殺団にしか見えないので、制服を作ろうと考えたのだ。
「デザインは俺が決めていいか?」
『お任せいたします』
「ありがとな。久々の創造、楽しみながらやるかー」
そして、作業開始から1時間。自分たちの近くを通る者もいたが、スキル[認識阻害]を使っていたので気づかれることはなかった。ほんと、なんでもアリである。
「どうだ?」
深紅で統一された制服は、燕尾服と儀仗服を足したようなデザインで、圧倒的高級感を放っていた。
それを見てロイが苦笑いしながら口を開く。
「団長、それは少し派手すぎるのでは……?」
「いや、それがいいんだ。これだけ派手ならば、暗躍しても俺たちとは疑われないだろう」
と、セツガは最もらしい理由をつけているが、実際はこんな制服を着てみたい、着させたいという欲が強かった。
先程ラバン王国王都へ向かった5名にも制服を送り、残りの隊員たちにも着用させる。
団員の制服だけでも一国の騎士団長が着ていそうなほど豪華なのだが、副団長はそれにプラス右肩から紺に銀の文様がはいったサッシュと純銀の飾緒を下げたデザインになっている。
そして自身の団長服は、純金の飾緒に膝下まである紺色
で金の紋様がはいったマントを着用していた。
全員がそれぞれ着用すると、セツガは自慢げに語り出す。
「一見して、激しく動けなさそうな感じに見えただろうが、この制服はあの暗躍用の戦闘服と変わらない性能がある。だから安心しろ」
全隊員が心の中で「問題そこじゃないから!!」と思ったが、口には出さなかった。
「あ、それと。傭兵団の名前なんだけど、深紅で統一したからそれに合った名前がいいんだが、なにかないか?」
すると1人の隊員ならぬ団員が手を挙げる。
そして許可を得ると嬉々とした表情で言った。……きっと彼も例の病にかかってしまっている者の1人なのだろう。あの、セツガの住んでいた世界では主に中学2年生男子が発症した病である。
「『紅龍』、はどうでしょうか?」
「イイね!決定!これから傭兵団の名前は『紅龍』だ!」
すっかり意気投合した2人を疲れた表情でロイとリンが見つめていた。そして2人は思う。
もう傭兵より軍隊の方がよくないか?と。