そして、再会を誓う
「――いま、なんと?」
「?ですから、勇者様が任命される……と」
「……なるほど。遂に勇者様が現れたのですね」
本当は、
「フォレスト神聖国ってどこ!?いつ行われるの!?てか勇者って誰!?」
と、問い詰めたいが、そんなことをすれば怪しまれてしまう。ここは無難に対応することが正解だろう。
するとサリーヌが少し驚いたような顔をする。
「もしやご存知なかったのですか?」
「ええ。我々はここよりずっと東の国から旅をしてきたもので、この辺りの情報はほとんど無いもので。……おや、あの女性は……」
しばらく進んでいると、王都手前の郊外で先程の女性が部下2人とともにいるのが見えた。女性はこちらに気がつくとこちらに駆け寄ってくる。
「お嬢様!ご無事だったのですね……!」
「ええ、この傭兵団の方々が窮地を救ってくださいました。よく助けを呼んでくれましたね」
涙目の女性は首を振って、「恐縮です」と答えた後、こちらに向き直って深々と頭を下げた。
「お嬢様を……いえ、王女殿下を救って下さり、誠にありがとうございました」
それに対しセツガは柔らかい笑みを浮かべる。
「そう約束しましたからね。無事ここまでお連れ出来て良かったです。では、またどこかで」
「お待ち下さい。バルコ」
「はっ」
そういってセツガたちが去ろうとしていた時、サリーヌが馬車から顔を出す。すると何やら書状を騎士が渡してきた。
「勇者様について知りたいようでしたので、フォレスト神聖国に住む知り合いへの紹介状を差し上げます。どうかお受け取り下さい!」
「!…ありがとうございます。とても助かります」
実際、これからフォレスト神聖国に向かおうとしていたので、とても助かった。それにしても、関心があるとは思われても、ここまでしてくれるとは……。将来大物になりそうだ。
いつかのリンと同じことを考えながらも、素直にセツガは感謝を伝え、微笑んだ。
それに対し、サリーヌも艶然と微笑んだ。
きっと、ここが街中であれば、周りは民衆で溢れていただろう。なぜなら……
「おお……あの力強い笑み、まるでサリーヌ様を救う王子のようだ」
と、騎士たちが思っていたからだ。2人が微笑みあう姿は、どちらも美形なだけあって、とても絵になった。
そしてそれは騎士たちだけでなく、
「ええ……王女様も儚く、美しい笑みを浮かべおられますね。まるで団長を送り出す天使のようです」
と、リンが答える。
そう、この覇月隊(傭兵団)の連中もだった。こいつら、とても優秀ではあるのだが、その節、セツガをとても慕っている……つまり、セツガ大好きっ子の集まりでもある。
「おお……!団員の皆さんもそう思うか!」
「どうやら、我々は友となる運命のようですね」
そしてそのままガシッと、固い握手を交わす騎士たちと覇月隊員(傭兵団員)たち。
それを遠目から苦笑いしながら見る、バルコとロイ。
「何はともあれ、この恩は必ず返させていただきます」
と、バルコはロイに思いを伝える。ロイはそれに軽く頷き笑いかける。
「分かりました。ですが、困ったときはお互い様。困ったときは我々もお呼びください。どうやら、あちらではすでに同盟を結んでいるようですし」
「はっは。そのようですな。では、次からは背中を預けてもらえるよう、訓練をより一層頑張ることにします。どうか、よろしくお願いします」
「こちらこそ、ともに戦えるのを楽しみにしています」
そして、バルコとロイも、他の者たちと同じように、固く握手を交わすのだった。
おつです。湿度が高くなってきましたね。あぁ〜暑くなるぅ〜。(;´Д`A