そして王城へ……行くわけないでしょ
約一週間ぶりです!
その夥しい魔物の骸数に、騎士たちは戦々恐々としていた。
そこに第三部隊長、リンが王女サリーヌとその周りの騎士たちに確認する。
「皆さん、ご無事ですか?」
「「ッ!!」」
瞬間、騎士たちがサリーヌを背に身構える。だが、サリーヌが手で騎士たちを制すると、直ぐに構えを解く。
それを確認すると、サリーヌが深々と頭を下げる。それを見た騎士たちはギョッとした。
「で、殿下、いくら命を救われたとはいえ、何処の者かもわからぬ相手に王族が簡単に頭を下げてはいけません」
「私はこの方々に命を救われました。これは決して簡単なことではありません」
「…はっ!失礼いたしました!」
騎士の1人の忠言に、毅然と返すサリーヌ。その少女とは思えぬ堂々とした姿と言葉に、騎士は感服しながら自身の非を認めた。
リンはそんな彼らの姿を見て、きっとラバン王国は当分安泰だろうと感じた。
「では、改めて。私はこの領土の国、ラバン王国第二王女、ラバン・フォン・サリーヌと申します。この度は我々を救って下さり、ありがとうございました。
失礼ですが、あなた方は一体?」
お礼と同時に、騎士たちがこちらに向き直り、胸の前で剣を掲げる。彼らの敬礼なのだろう。
サリーヌの質問に、リンが答える。
「我々は流浪の傭兵団です。兵団名はありません」
「そうでしたか。きっと他の地でもご活躍されておられるのでしょう。報酬と言いますか、御礼をしたいので、王城まで御同行願えますか?」
騎士の1人が敬礼しながらリンに聞く。するとリンは、「剣持ったまま話しにくくないのかな」などとどうでもいいことを考えていた第一部隊隊長兼、覇月隊総隊長、セツガに指示を仰ぐ。
因みに、この場では傭兵団なので、各名称で呼び合う。
「団長、どういたしましょうか」
「ん?丁重にお断りします」
「はっ、ではまず王都へご案な…………え?」
秒で断られた騎士は、数秒フリーズしたのち、素っ頓狂な声を上げてしまった。
周りの騎士も呆気に取られている。
困惑しながら騎士は問う。
「し、しかし、傭兵団ならば、雇われ兵。普通報酬をもらうものでは?」
ごもっともな騎士の質問に、セツガは。
「ええ。その通りです。ですが、我々は実は今他の依頼人からの依頼がありまして。その依頼の内容もあってあまり派手に動くことは出来ないのです。もし王城に行くとなれば、当然噂が広まってしまう。それは我々の傭兵としての流儀に反するのです。どうか、ご理解ください」
それを聞いた騎士たちとサリーヌは唸る。
一時ののち、サリーヌが顔を上げる。
「……分かりました。でも責めてここにある白金貨を持って行って下さい。これだけで恩を返せるとは思っていませんが、王族として何もしない訳にはいかないのです」
白金貨は日本で言えば1000万円である。普段のセツガならば絶対に受け取らないが、今は傭兵であること、また、王族相手に無理を言っている事も理解していたので謹んで受け取ることにした。
(って、待てよ?これから表では傭兵でやっていくなら黒ずくめ集団はおかしすぎるか?……デザイン考えよ)
今更ながらそんなことを考えながらセツガは報酬の白金貨を受け取る。
セツガは女性に伝えた通り、覇月隊が王都城壁手前まで護衛すると伝え、自身は前方の警戒を勤めることにした。
しばらく進んでいると「あっ」と、サリーヌが思い出したようにセツガに言った。
「そういえば来月、念願の勇者任命式が『フォレスト神聖国』で行われるらしいですよ」
「――え?」
次の予定を組み立ていたセツガは、目を軽く瞠って後ろの馬車に乗るサリーヌに向かって振り向いた。
バイルークの通貨は、
鉄貨=1円
銅貨=10円
大銅貨=100円
銀貨=1000円
大銀貨=1万円
金貨=10万円
大金貨=100万円
白金貨=1000万円
大白金貨=1億円
龍貨=10億円
となっています。白金貨からは主に国家間での取引でしか使われません。
何故『龍貨』が1番高額かというと、バイルークでは龍が全種族共通(魔族含む)で畏敬の存在だからです。(伝説的理由もあり)
また、これから出てくるであろう『竜』はモンスターで、龍とは関係ありません。
ここまで見てくれた方、ありがとうございますm(*_ _)m