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40話 フワフワパンケーキ

 スキルへの感動はそれくらいにして。

 このメレンゲを混ぜた生地の入ったボールに加え、さっくりと合わせる。

 そしてあとは、この生地を焼いてみるだけだ。

 オラの実油をフライパンに広げたら、弱火にするため竈の火から離して熱する。

 そして油がパチパチと音を立ててきたところに、生地をそっと流し込む。


 ジュワァァ……


 熱された生地から甘い香りが漂い、ゆっくりと膨らんでくる。

 そのフワフワパンケーキのいい匂いとふんわり感に釣られたようで、いつの間にかレイがかまどに近付いていた。


「レイ、危ないからもうちょっと離れていような」


そう声を掛けたら、一歩だけ下がったレイの足元では、シロがふんふんと鼻を鳴らして、口を半開きにしている。

 まあこのシロもどこから連れてこられたのか知らないが、フライサーペントにモグモグされている間は、当然食事なんてできなかったはずで、きっと空腹なのだろう。

 雑食だという情報だから、このパンケーキも食べれるだろうか。


「お前の分も作ってやるから、もうちょっと待ってな」


アキヒサが声をかけると、シロはわかっているのかいないのか、尻尾をフリフリ羽をパタパタさせた。

 そういえばこうして見ると、レイも白い髪の毛なので、白×白で一緒にいると目立つ。

 それに美幼児と子犬という組み合わせは、卑怯なくらいに可愛い。


 ――これは街に付いたら、変態に要注意だな。


 それはともかくとして。

 このまま一人と一匹を横に張り付けて作業も、やり辛いし危ないだろう。


「レイ、早く食べたいならお手伝いしてくれるか?

 野菜をこの器にいっぱい入るくらいに、千切ってくれると助かるんだけど」


というわけでレイにお手伝いを提案して、お手本として野菜を手で千切ってみせた。

 レイは「早く食べたいなら」というセリフに反応したようだ。

 こっくりと頷いたので、手を洗ってあげると野菜と器の並ぶ前にしゃがみ込み、後は黙々と野菜を千切りだした。

 その小さな手から零れ落ちた野菜のかけらは、シロがつまみ食いしている。

 そんなことをしている間にも、ボリュームのあるフワフワパンケーキが焼きあがった。

 焼きの作業をあと二回繰り返し、全員分のパンケーキが揃う。

 その頃にはポークステーキもいい感じに焼きあがっていた。

 レイ作の千切った野菜サラダも出来上がっており、これらとピクルス、タイム茶にアポルジュースをテーブルの上に並べれば、夕食の完成だ。


「「いただきます」」


「アウン!」


二人と一匹で食事の挨拶をしたら、早速食べることにする。

 レイが手に持つフォークをフワフワパンケーキに刺した瞬間。


「……!」


目を真ん丸にして驚いた。


 ――ふふん、やっぱりそんな反応になるよな!


 内心ニンマリしたアキヒサが見る前で、レイはパンケーキのかけらを口にほおばると、へにゃっと頬が緩む。

 その顔は、どんな「美味しい」って言葉よりもリアルだ。

 シロもガツガツと食べ始め、口の周りをベッタベタに汚している。

 シロ的にはポークステーキが美味しいようだが、フワフワパンケーキを食べると不思議そうな顔をしていた。

 きっと、雲を食べているような気持になるんだろう。

 けれどアキヒサも他人の事ばかり眺めていないで、自分の分を食べる。


「うん、やっぱりフワフワは正義だな」


黒パンに慣れると、余計にフワフワの幸せ感が増す気がする。

 これは特別な日のメニューにしたら、食事にメリハリがつくかもしれない。

 それにこれはレイが気に入ったようだから、他のフワフワメニューも思い出しておこう。

 ――誕生日にケーキを用意してあげたら、喜ぶかもな。

 レイの誕生日が一体いつなのか? という疑問はあるのだが。

 こうして大満足の夕食を終えたら、すぐにテントに入り、二人と一匹でギュッとくっついて寝た。

 アキヒサの腕の中で、レイがシロを小さな手で抱きしめて寝ている。

 いい夢を見れるといいけれど、シロがうなされているので、レイはもう少しシロを抱きしめる手の力を緩めてあげた方がいいだろう。

 アキヒサはそっとレイの手の位置を直して置いたのだった。

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