19 大胆過ぎる作戦
「というわけで……姫、お前のチート巫女としての最初の大仕事はここの村の奪還だ」
「は、はぁぁぁぁぁぁ!?」
魔王であるお兄ちゃんから出た言葉……最初の大仕事で直接現場に派遣するというのだ。 制圧だけなら兵士たちにでもやらせてあげればいいのに……
「私たちの軍の兵士を使うよりも……巫女様の力を使うほうが確実に制圧できるのよ」
「どういうこと……?」
「姫の力は【黒の服従】三日間敵に姫の支配権――まあ好きなようにできる権利だな――を与えることで姫を支配していた奴らに対する一定の権限を持つことができるぞ」
「うーむ……つまり、私が三日間色んな苦痛?に耐えれば相手を支配できるようになるってこと?」
「まぁそういうことだな。あ、後その効果は解除しない限り永続的に適用されるからな」
なんか壊れてないか私のチート……いや、感覚がマヒしてるから気づかなかったけどチートって性能が壊れてるのが普通だったね……
「それで、今回の作戦だが……姫が巫女装束で一人、村の入り口から正面突破をする。その際、一人か二人殺して欲しい。すると大勢の騎士がお前目掛けてやって来るから……今度は盛大に暴れてくれ。出来るなら全員殺してしまっても構わんぞ。」
「……それで勇者をおびき寄せるの?」
「そういうことだ。で、おびき寄せられた勇者たちと戦闘しろ」
「う、うん」
「その最中に……あ、自己紹介がまだだったな。サフィーラ、ここから説明頼む」
お兄ちゃんが指名したのは、赤髪ポニーテールの幼女。口元からちっちゃいキバが覗いている。
「くっくっくっ……魔王様直々に我を指名されるとは。我、サフィーラ・シャルロットのスキル【洗脳】で勇者パーティーの一人を洗脳するのぢゃ。ただし……支配権はまだ勇者側にあるのぢゃ。我はそれを媒介にして巫女様に拘束魔法を掛けるのぢゃ」
にぱぁ~と悪魔的な笑顔を見せるサフィーラちゃんは、さらに続ける。
「で、護衛としてはクレアと……かつて世界を滅ぼした竜の種族の生き残りであるエルナを連れて行くがよいのぢゃ。魔王様、良いかの?」
「あぁ、構わんぞ。」
お兄ちゃんは首を縦に振る。 魔王って基本的に命令する立場っていう印象なんだけど……お兄ちゃんんからは独裁者みたいなオーラを一切感じない。
これが上に立つ者の本来の姿なのか……なんて考えてしまう。
「それで……拘束魔法を掛けられた巫女様はそのまま捕まるのぢゃ。その拘束魔法には【支配】の効果が付与されているのぢゃ。」
「つまり……勇者側の人間に【支配】されることで【黒の服従】の効果が適用される……ということね」
「そういうことなのぢゃ」
うーん……思ったのは黒の巫女っていう魔王軍で二番目に偉い私の扱いがかなり雑なこと。てか一回捕まるってなんでそんな面倒くさい事をしなければならないんだろうねぇ
「姫……もしかしてドМのマインドを与えたほうがいいのか……?」
「えっ……うん」
お兄ちゃんの提案に即答する私。ドМって痛みとかで興奮する状態だから……今の私にぴったりなのかもしれない。
「……飲め」
お兄ちゃんはどこからか取り出したカプセル状の薬……?を、水の入った試験管と一緒に手渡してきた。
「ごくごく……んっ。 ってあれ?特に変化がないんですけど」
「……おかしいな、普通だったら顔を赤らめてアヘるはずなんだけどな」
「それただの変態じゃん」
「……姫、もしかして薬物耐性でもあるのか……?」
「分からないよぅ」
「まぁいい。とりあえず作戦の概要は把握したな。」