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強いぞ!風間俊介。

 温泉治療室の老人5人はサイボーグの身体のメンテナンス中、胴体と引き離された頭でロビーで会話していた内容と大差無い会話をしながら笑い合っていた。

 非常に非現実的な光景だが彼らにとっては日常の流れなんだろう。

 この閉ざされた寒村で現実世界の人らからは見放される位置なのに第六病院のお陰で平穏無事に過ごせている事を思うと複雑な心境となる。


 人のゴシップを売り買いして生きているハイエナに化けてこの第六病院の調査に潜入した公安の犬の俺だが稀に国家の仕組みよりも秀逸な世界観にお目にかかる事がある。

 どんなに秀逸でも世の体勢とあい反すればその存在は消去される。

 この村人と第六病院、どの様な決着となるのやら気持ちは滅入るが仕事を進めるしか無い。

 西棟を抜けロビーに入る。

 さっきから付けて来ている奴らの気配が強まる。

 ここで襲うつもりだろう。

 そう容易く隠密潜入が出来るわけもないか。

 東西南北それぞれの鉤十字から2つずつ人影が現れる。

 近ずいて来るに連れその容姿がはっきりしてくる。

 ドイツ人だ!

 銀髪で眼はブルー、鍛え抜かれた筋肉美にオリンポスの神々の様な白い布を肩口で金の輪っかで留めている。

 腰にも金の輪っかが連なるベルト。

 足は革製のサンダル履き。

 足首から脛にかけて皮の紐で固定されている。

 そして腰にグラディウス。

 片手には革製の丸盾。

 4本の投げ矢が盾に付いている。


 おいおいギリシャ神話かよ!

 8人か。

 先制攻撃だな。


「我ら純血のアーリア人の聖域を汚す、どぶネズミめ」

「成敗してやる」


 古めかしい言葉を使いやがるがこいつら二十代位だ。

 アーリア人ってドイツ人の祖ゲルマン人の更なる純血種たる神の使徒たるある意味人類の頂点。


 そうなの怪しさ満載の第六病院だ!


 俺は四方を囲まれてオロオロと動揺する。

 ソワソワと逃げ道を探す。


 8人は笑みを浮かべながらグラディウスの柄に手をかけながら包囲の輪を縮じめる。


 〈わーーー〉と手で頭を覆う。

 瞬間、白銀の光が四方に飛ぶ。


 人類の究極8人が崩れ落ちる。


「ゴメンね〜大人は卑怯でね」

 と黒頭巾に巻き付けていた仕込み針の帯を手に下げながら北棟に走り去る。

風間俊介は公安の暗部部隊員だった。第六病院を探るために潜入した。サイボウグ化した老人、ナチスの優生政策の到達点であるアーリア人の若者まで現れた。これはホラー以上の天地がひっくり返る怪しさだ。

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