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ときには泣きたい  作者: たちかぜ
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ときには泣きたい PAST

どうも俺は、話題の人物らしい。

 親父とお袋が結婚した時のことだ。

家族パーティーをやるからと、

半強制的に実家に戻ることになった。

親父と俺と、弟となった高幸とその母親。

何話せばいいんだよ・・・・・・と不安に思いながらも帰宅すると、

宴はもう始まっていた。

「あ~、やっと来たぁ。後少し遅かったら、家に到着するまで電話かけようと思ってたのよ

高幸の母親が声を弾ませながら言う。

 よ、良かった。早く(早くもないけど)帰ってきて。

「亮平、何おまえが主役になっているんだ。今日の主役は俺たちだぞ」

 そう言うと親父は高幸の母親を抱き寄せる。

 あーもう、勝手にしてくれよ。・・・・・・帰っていい?

「えー、オレはなんなのさー」

 高幸が少しむくれている。

「高幸は、俺の息子だよ。出来の悪い兄貴をよろしくしてやってくれ」

 ・・・・・・なんか俺だけ疎外感?

 というか、小ガキ生によろしくされなきゃならないほど、

俺はダメ人間かい?

冗談だとしても、このノリには付いていけない。

「亮クン。ほら、沢山食べるのよ。ごちそうなんだから」

ここで、俺は「はぁい、ママ」というべきか・・・・・・。

――言えるワケねェ・・・・・・。


それから、それなりに楽しく過ごしたけれど、

小ガキ生の適応力には、もうマイッタねという感じだ。

何の違和感もなく、小ガキ生からみれば、

じいさんである親父を「お父さん」と呼ぶ。

「おじいちゃん」って呼んでもいいんだぜ?

と俺が小ガキ生に言うと、

親父は「じゃあお前が早く結婚して子ども産め」とのたまった。

親父・・・・・・俺は子どもは産めねぇよ。酔っ払いが・・・・・・。

 ガキの教育によろしくないだろ?

 小ガキ生の。

あ、俺は小学生なんて言ってやんないよ。

ガキだよ、ガキ。小ガキ生。

学ぶなんて字つけてやるのもったいない。

まぁ、俺も勉強なんてあんまりしてないけどね。

でも俺は、大学生だから。よろしく。

 夜遅くまで、新・家族でバカ騒ぎして、

高幸は眠くなったと、おとなしく自分の部屋へ引っ込んだ。

 それを待っていたかのように、

高幸の母親が、俺に向き合い言った。

「亮平君。高幸と仲良くしてやってね。愛想なく見えるかもしれないんだけどね、前の学校でお兄ちゃんができるって皆に自慢したらしいの。写真まで持っていって」

 俺は飲んでいた酒を吹きこぼしそうになった。

 大学1年・未成年。今日は親公認。

 何度もいうけど、

ほんと、小ガキ生の教育にはよろしくないよね・・・・・・。


「……先生とか、良い顔しなかったでしょう」

「先生というより、高幸の同級生の親がねー。遺産目当てじゃないとか、まぁ色々」

「そんなに遺産あるなら、親父。俺の小遣いあげてくれよ」

「阿呆。大学の学費、下宿代。それに俺の結婚式の費用に、コレから行く新婚旅行。俺が欲しいわ」

 こんな駄目親父で本当にいいんスかって聞きたくなるよ。

金持ちでもないしね。

 風呂入って来るかな、と鼻歌まじりで行く親父は

腹がでていたり、ハゲてはいないけど、

正真証明のオヤジで・・・・・・。

「亮平君。ごめんね、ありがとう」

 親父が部屋から出ていくと、由紀子さんはそう言った。

 顔は少し赤いが、酔いはさめているようだ。

「ごめんで、ありがとうって、ワケわかんないっスよ」

「歳、私亮平君とお父さんの中間くらいじゃない。そういうの微妙だし、嫌だと思うのね。それなのに、結婚反対しないでくれてありがとう」

「や、親父の人生でしょ。反対する権利なんかないし。最初はびっくりしましたけどね」

 高幸はともかく、この人は歳より若く見えた。

だから余計驚いた。


「私ね、高幸に『お父さん』を与えてあげたかった。だから結婚決めたの。もちろん、好きって気持ちがあったからなんだけど。

 だから亮平君のこと、二の次、三の次にしてしまった。

・・・・・・それ、ずっと謝ろうと思ってた」

 会った時から明るく、いつもはしゃいでいるなと思っていた人が

泣きそうになりながら言う。

「亮平君のお母さんの写真、見た」

「親父、何考えてんだ?」

 思わず声に出してしまった。

 そんなの見て、良い気分な人はいない。

 絶対気になるし、それが後にひくこともある。

 俺でもわかる。

「違うの。私が頼んだの。亮平君と同じく、亮平君のお母さんにも謝りたかった」

 俺が幼稚園の時、母は死んだ。

それ以来ずっと父子家庭。

今まで親父がずっと結婚しなかったことを考えると・・・・・・。

「反対してませんよ。さっきも言ったけど。『母さん』とは素直に言える歳じゃあないですけどね。正直俺、あんまり母親覚えてない。でも、親戚連中は似てるって。そんな俺の意見は、親父もっと早く再婚したら良かったのに。多分死んだ母親もそう。俺と似ているならね」

「ありがとう。亮平君。・・・・・・高幸をよろしくね。あの子素直じゃないけど悪い子じゃないから・・・・・・」

 そう言うと俺の返事を待たずに寝てしまった


 次の日、俺はなんとなく夕方まで家にいた。

ずっと家にいたんじゃなく、

戻ったついでに同級生と遊んでいたんだけどね。

 夕方、下宿先に帰るための荷物を取りに行くと、

玄関に小さな靴がいっぱい。

 な、何事?

「あー、亮平遅いよ。何してたんだよ」

 俺が玄関で固まっていると、

高幸を始め小さいのがゾロゾロと出てきた。

「おー、写真と同じだ」

「いいなぁ。高幸君。私もお兄ちゃんほしいなあ…」

「オレいるけど、こっちの方がいい」

 好き勝手なこと言ってるよ・・・・・・。

 高幸の母も顔を出し「亮平君モテモテね」なんて

ニコニコという。モテるなら俺、同年代がいいよ。

「亮平、オレの新しい学校の友達。挨拶」

 挨拶って何だよ。挨拶って。

 しかも何でおまえは俺を呼び捨てにしているんだ?

 とは思ったものの、

「はじめまして。よろしく」

 とか挨拶している俺も俺だよな・・・・・・。

ま、転入してイジめられないで良かったよな。

っていうか、俺のことを友達に何て言ってるんだ?

下手に聞かない方がいい気がして、

俺は引きつり笑いを浮かべながら、

壁沿いに荷物置き場と化している俺の部屋へ向かった。<了>

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