始動
喋りながら歩いていたら、あっという間に着いた。
ーーーさーて、豚もどきさん獲れたかな〜!
「2人とも、血生臭いのは平気?」
「おう!俺らは慣れてるぜ!って言っても、死んでるやつ解体するとかだけど。昔は結構家畜がいたからな!」
「そうなんだ〜!じゃ、相手は生き物なので、心してかかられよ!えっへん!」
「何で、そんなに偉そうなんだよ!笑」
「ここからはちょっと静かにねー!」
「無視すんなや!」
…あ!いたいた!ニヤリ。
コソコソ…「なんか、カスミ顔が悪人みたいで怖いぞ。」
う、うるさいわ!
久しぶりの罠にちょっと心が乱れただけだもん!
よし、ここからは集中しよう。
罠にかかった、野生化した豚もどきはなかなかの大きさだ。1トンは余裕だけど…さすがおじいちゃん考案の仕掛け!
私たちを見つけて暴れ出す豚もどき。危ないから慎重にいかなきゃね。2人にはちょっと離れてて、と指示を出す。
少しずつ近づいていき、まず手頃にナイフでひと突きーブスッと。
ナイフじゃ分厚い皮膚には届かないけど、薄そうなところを狙うのがコツ。もっと言うなれば、足を狙うのがベスト!あまり傷つけたくないからね。本当はもっと長い刃があればよかったんだけど。
ま、私ならナイフでも余裕だから大丈夫。
だいぶ弱ってきたところを見計らって、ガバッと首に腕を巻きつけてそのまま頸動脈を腕を引くように切る!ーーブシャーーーーー!!!
おー!豪快に血を吹いた。
やっぱ大きいだけあるな〜。前の世界では、豚の血を飲む人間とかいたけど、こっちはどうなんだろう…あ、2人のこと忘れてた。
「…って、こんな感じでやるんだよ!(にこっ)」
「(にこっ)、じゃねーよ!可愛い顔して、やる事がこえーよ!!」
「だから、心してって言ったじゃないの。命をいただくんだから、痛みは最小限に抑えてあげたいしね。
さ、ほかの罠も見に行くわよ!」
青ざめる2人を無理やり引っ張って次へ。おー、こっちもかかってる〜!
今度は、鹿っぽいな。
要領は大体同じだから、サクッと片付けましょう。
…計5カ所に仕掛けた罠には、3カ所の獣が掛かっていた。上出来すぎでしょ。運ぶのが大変だった。
2人には手伝ってくれたお礼に分けることにした。
ついでに腐葉土も沢山袋に詰めて、みんなで無事帰還した。
「ただいま帰りました!おばあ様!今日も大量です!」
「おー、カスミ、何だか凄いね。ああ、テオとレノスも手伝ってくれたのかい。」
「ばあちゃん、久しぶりだな。
カスミ狂人だったぜ。まじで怖かった。」
やかましいわ!
まぁ、この2人がいなかったら、持って帰れず、命を無駄にしかねなかったから、今日のところは広い心で寛大に……
「おばあ様、2人に分けるために解体したいので、外で解体しますね。片付けはちゃんとしますので。
あと、食べきれないと思うので、干し肉にしましょう!」
好きにしなさい、とおばあ様の許可を頂き勝手にすることにしました。
「ねぇ、2人とも。私が他の女性とは違って、何でも出来るというところ、少しは分かってくれたかしら?もし、分かってくれたなら、是非ともお店の宣伝をお願いするわ。
まだ、料金とかは決めてないんだけど、最初は言い値でも良いと思っているの。信用されてから細かく決めていこうと思って。」
「…俺は、お前の知識がずば抜けてるのはよく分かったよ。アエリックさんも昨日の夜、俺たちのところにわざわざ『カスミの事を改めて話したい』とか言って、寄ってくれたんだけど、料理も掃除も上手いとか、褒めてたぞ。『まだまだ未知数だが、俺たちの知らない事を他にも沢山彼女は知っているだろう』とも言っていたし。」
珍しくレノスが喋った。
アエリックさん!ありがとうございます!
昨日わざわざ宣伝してくださったのね!たしかに、あの血濡れの状態では印象悪いわね…本当に優しいわ!
「俺も、『何でも屋』?だっけ、…まだよく分からない職種ではあるけど、今の暮らしがもっと良くなるなら、お前の仕事大賛成だぜ!(にかっ!)」
テオは八重歯があって可愛いな。
「2人とも、ありがとう!困ってる人がいたら教えてね!直接売り込みに行ってもいいし!」ニヤッ
「…カスミは、腹黒そうだな。」
「いちいちうるさいよ?テオ」
「顔整いすぎて、その、目が笑ってない笑い方ちょーこえー!」
ケラケラ笑いながら、私達は無事解体を終え、干し肉も作り、3日後のお昼は、ご近所さん達に親睦会も兼ねて、バーベキュー(食事会)のご招待をするので、お越しくださいと伝えておいてくれるよう、2人にお願いして、解散したのだった。