始動
「おーい!アエリックさん!ずぶ濡れで何やってんの?
あれ?あんた見た事ない顔だな〜!めちゃくちゃ美人なのに、血だらけだな。怪我でもしてるのか?」
え?私美人なの?そうなんだ。
「初めまして。私アエリックさんのおばあ様の所でお世話になっているカスミと申します。
今度『何でも屋』(以下略…)という会社を立ち上げますので、よろしくお願い致します。」
「何でも屋?よく分かんねーけど、よろしくな!俺はテオ。向こうにいる奴らはニコと、レノス!よろしくな!」
「よろしくお願いしまーす!」
と、お二人に向かって、にこやかに手を振って挨拶しといた。
「テオさん、鶏肉はお好きですか?」
「鶏肉?好きだぞ。いきなりどしたの?」
「あ、これお近づきの印に!今獲ってきたばかりなので美味しいと思います。血抜きはしておきましたので。あそこにいる方々と、あそこにいるおじ様おば様にもお渡しください。」
と、5羽渡した。
「へ?血抜き…ってまさか、お前がやったの?すげーな。引くわ!」
がーん。直球すぎて辛い。
「ありがとな!(にかっ)」
っと素敵な笑顔で言われました。
まあ、女子が血抜きとか普通に引くよね。別にだからと言ってやめたりしないけど。
あ!待ってろ!っと、テオは言いながら走って家まで行ってしまった。あそこが自分の家なのかな。
…あ、戻ってきた。
「鳥くれたから、俺ん家で育ててる野菜と香辛料持ってけ!」
「あ、ありがとうございます!助かります!」
「…早く帰って風呂入った方が良いぞ。…せっかく美人なのに台無しだな。」
そんな照れながらストレートに言われて、ある意味心臓にズッキュンときましたよ…トホホ。
…テオと別れて帰っている途中、アエリックさんに『気にするな』とフォローされ、更に悲しくなりました。…私、ここの世界でも結婚出来そうにないかも。
「おばあ様ただいまー!」
「ああ、お帰り。何だいその格好は。さっさと風呂に入りなさいな。」
ーーー…ガラガラガラ…ジャーーーーッ、ジャバッ、ジャバッ!ジャパンッ!…
フゥ〜…気持ちいい〜!ここのお家は湯槽があって良かった。
今日は頑張ったな〜!明日は豚もどき獲れてると良いな〜!
もうめんどくさいから、豚でいいや。
早く出てアエリックさんと交代しなきゃ!
「お先にお風呂頂きました、アエリックさん。」
「ああ、構わない。私も入ろう。」
よし!今のうちに料理しよう!
テオからもらったお野菜と香辛料も使って、ローストチキンでも作ろうかな!
あと、ご飯を炊くときに、鶏肉の炊き込みご飯にしよう。
ローストチキンは、オーブンが無くても、鳥が小さめだし、多分フライパンかお鍋で行けるはず!
下処理をし、野菜を詰める。ニンニクもどきのお野菜や、香味が強そうなお野菜もいくつかあって良かった。バターが無いけど、今度作ってみよう。そう言えば、牛っているのかな。ヤギでも良いけど。
そんな事を考えながら順調に進んでいく…
あー!良い匂いがしてきた!
蒸し焼き状態にして待つ事30分!丁度アエリックさんがお風呂から出てきた。仕上げにテオからもらった香辛料を、一振り。…完成!!
「アエリックさん、おばあ様出来ましたよ〜!」
「ああ、良い匂いだね。美味しそうだ。」
「おや、今日はまた格別に馳走だね〜。」
「はい!テオさんからお野菜と香辛料も頂きました。なので、今日は炊き込みご飯と、ローストチキンにしました。」
「じゃ、いただきます。
…ん〜!!!美味い!!美味いよ、カスミ。こんな洒落たもの、食べた事ないね〜。あんた、料理も天才だね。」
「本当だ。とても美味しいよ。
王宮の料理人にも負けないんじゃ無いのか。」
え?オーブン使ってないのに、王宮の料理人と良いとこ勝負なの?
へー、そんなに、ランク低いのか…
「そんな!褒めすぎですよ!でも、ありがとうございます。
私、栄養士と、調理師の資格も持っているので。他にも、色々なマイスターの資格も持ってます。お野菜の目利きや、お酒の目利きも得意ですよ!」
「…よく分からないけど、カスミは凄いな。本当、何者なんだ?あははっ!」
ア、アエリックさんが笑った〜!
キュン。
「あ、アエリックさん、動物のお乳とかってありますか?私は牛乳って言ってるんですけど。バターとか、チーズを作りたくて。」
「ああ、実は今、仕事仲間のケンタウロスがいるんだよ。その奥さんがミルクいっぱい出るから分けてもらったんだ。すぐに欲しいなら、植物の苗や種、他の頼まれた物と一緒に、明日朝一で持って来るよ。カスミの料理がまた食べられるなら喜んで。」
…ツッコミどころ満載なんですけど。イメージするとモザイクかかるわ〜…
明日一回味見(毒味)してみよう。
そんなほのぼのした食事を終え、アエリックさんは帰って行った。
私も流石に疲れて、すぐ眠りについてしまった。
読んでいただきありがとうございます。
引き続きよろしくお願い致します。