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日常  作者: 三郷 柳
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case1. ネガティブ彼氏×変人彼女②

case1.

 朝、7:00ちょうど。川瀬みちるはドアの向こうのSOSで1目が覚める。同棲中の恋人、高村光基は毎朝ラッキーアイテムをチェックするのだ。

「みっちゃーん。食品サンプルってあるかな?」

 みちるはこの頼りない声が好きだ。

「もちろんあるともさー。和洋中どれにする?」

 みちるの部屋はこれでもかというほど散らかっている。ガラクタの山に書き損じたコピー用紙。

 混沌とした部屋の中から、みちるは食品サンプルを見つけ出し高村の待つリビングへ向かう。

「おはよう。なんでまたそんなに沢山持ってるの?」

「おはようさん。んー、たぶん資料で使ったんだと思うー」

 みちるは詩人だ。作風はノスタルジックなものから人間の内面を吐露するようなものまで幅広く、ジャンルはこれといってない。

「じゃあこのカレーを借りてくね」

「はいよー。今日の夕飯はカレーにする? カレーならパッケージ見ながら作れる気がするでの」

 みちるはナイスアイディアとばかりに手を叩く。

「カレーならまぁ、お願いしようかな。……ちゃんとパッケージに沿って作るんだよ?」

「おうともよ! 任せなさいな」

 高村は心配気であるが、みちるは気合満々だ。

「じゃあ任せるね。くれぐれもケガしないように!」

 高村はそう念押しして出勤した。


「さて、まずはお仕事しますかね」

 みちるは部屋に籠ってコピー用紙とボールペン、緑茶とチョコレートを机に並べる。

 最終的にはPCに打ち込むのだが、みちるは必ず紙に書き出す。ペンが紙にこすれる感覚がみちるの思考を広げていくからだ。二度手間と言われようが、みちるには重要な作業なのである。

 紙を大量に消費する非エコと、ずぼらな性格ゆえに部屋が書き損じの紙だらけで散らかるのはたまに高村の注意を受けるのだが、気にするみちるではない。

 消費が激しいのは紙だけではない。

 ボールペンのインクもすぐに切らすため、大量にストックしてあるのだが、面倒くさがりのみちるは消費した分を買い足し忘れる。

「なんてこったい。ストックもなくなっちまったぜよー。せっかく乗ってきたのになー……あれ、いま何時だ?!」

「ただいまー。みっちゃーん?」

「やばす。完全に忘れとったー」

 手を額に当てて天を仰ぐ。みちるはオーバーリアクションであると、高村は言う。

「おかえりんしゃい。すまねぇ! カレーまだ作っとらん!」

 部屋から飛び出してスライディング土下座をすると、高村は笑って買い物袋をみちるの下げた頭の横に置いた。

「仕事、頑張ってたんだよね。お疲れさま。今日は一緒に作ろうか」

「おぉー! さっすが光基~。作る作るー。めっちゃ頑張るよー」

 少し額を赤くしているみちるは勢いよく立ち上がると、キッチンへと走る。

「うん。あんまり張り切らないでね」

 買い物袋を持ってあとから向かう高村は苦笑いだ。


 すぐに危ないことをしようとするみちるを見張りながら、高村が一人で作る何倍もの時間をかけて作ったカレーは、幸せそのものであった。

 こうして今日は終わっていく。

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