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日常  作者: 三郷 柳
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case1. ネガティブ彼氏×変人彼女①

case1.

 朝、7:00ちょうど。高村はテレビの星座占いをチェックする。

「10位は牡羊座のあなた。今日は些細なことでトラブル発生。冷静に対処して。ラッキーアイテムはマトリョーシカ」

 女子アナは、残念な最下位の誰かに開運アイテムを紹介している。

 なぜ開運アイテムは最下位の人しか教えてくれないのだろう、と高村はいつも思う。

「それより問題はマトリョーシカだ」

 たいていの家にはマトリョーシカなど常備されていない。しかし、高村には当てがあった。

「みっちゃーん。みっちゃんの部屋にマトリョーシカってあったりするのかな?」

 みっちゃんこと川瀬みちる。高村の同棲中の彼女で、部屋は混沌とした異次元空間であり、彼女の人格そのものとも言える。

「マトリョーシカ? あー今日のラッキーアイテムねぇ。もちろんあるともさー」

 ドアの向こうから物がぶつかる音と紙が散らばる音が聞こえてくる。しばらくしてみちるはマトリョーシカを片手に部屋から出てきた。

「ほれ、マトリョーシカ。光基も毎日頑張るねぇ」

 みちるはソファに座る高村の隣にだらんと横になる。

「ちなみこのマトリョーシカってどこから……?」

「お父さんが偶然一緒にお酒を飲んでいたロシア人から5000円で買ったらしいよ。酔いが醒めたら要らなくなったって私にくれたー」

 高村はマトリョーシカを大事に鞄にしまった。

「これでトラブルが起きないといいんだけど」

 これは毎朝出社前の儀式だ。高村はどうでもいいことが心配になる質で、日々ストレスに追われている。

「だぁいじょーぶだって! なんくるないさだよ。なんとかなるなる! イジメられたら私が助けに行くさーね?」

 隣でへらりと笑うみちるが高村のストレス緩和剤であり、その存在に焦がれて仕方がない。

「……みっちゃんも鞄に入れられたらいいのに……」

「えー。私結構重量級よ? 光基の筋力じゃあ持ち上がんないよー。あ、キャリーバックなら行けるね」

 一緒に行く? となぜか楽しそうに本気で訊いてくるみちるに、高村は今日も少しだけ肩の力を抜いて玄関を出ることができるのだ。

「いってらっしゃーい。暫しの別れだ」

 寝起きぼさぼさの頭と年季の入りすぎた高校ジャージで手を振るみちる。高村は無言でみちるの頭を撫でた。

「行ってきます。みちるも仕事頑張って」

「おうよ!」


 今日も一日が始まる。

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