文才のない私が自己満で文を書き連ねて見ました。
居住とは大切なものである。子供の頃の僕にはそれが理解できなかった。家族と暮らし、共に食卓を囲み、そして床につく。かつて感じていた当たり前の思いは、ただただ思い込みにしか過ぎなかった。
大学生になり、ひとり暮らしを始めた。はじめは高揚感でいっぱいだった。夜なべでゲームしても、誰にも怒られない生活。そこには憧れしか存在しかしてなかった。
音が響きやすい木造とはいえ築5年という綺麗なワンルームアパート。住むのには何不自由なく思えた。軽快な気持ちで契約を済ませ、人生初のひとり暮らしが始まる。
しかし、理想が崩れるのは早かった。早速ゲームしようと設置作業に取り掛かる。ガチャガチャ、カチカチと、設置作業音のみが部屋に響き渡る。
部屋に入居してわずか5分頃のことであった。私は人生で初めて壁ドンをされた。
他人からの憎悪を直接的に向けられたのは初めてであった。私は昔から他人から嫌われることを極度に恐れる性格である。嫌われたくない一心で、今まで皆が喜ぶような行動をとるよう気をつけてきた。
そんな私が今向けられたのは憎悪の塊である。恐怖を感じると同時に、自分が苛立ちはじめたことが分かった。なぜこんなことだけで怒るのか。ちょっと音をたてただけだろう、と。思わず小さく舌打ちをした。。壁があるのだから、聞こえるはずがないだろう。そう思ったのがマズかった。
無情にも、舌打ち音は聞こえていたらしい。それからというもの、私がなにか一挙主一動作するたびに隣人は壁ドンをしてきた。何十回も繰り返される悪魔のノック音は、私の心を恐怖のどん底に陥れるのにはとても十分なものだった。