群影急襲 2
宵闇の砂漠。
昼間の熱射とは打って代わり、冷たい空気が漂い、白い月光が広大なこの地を照らす。
この広大な地を進むのは、彼女達……歴戦の勇士、アリーシャ・リュミエールを擁する旅団、「Cielétoilé(シエル・エトリィー)」だけではなかったのだ。
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真っ黒な炭素複合装甲板の内壁の傍で黒鉄の床に座り込むと、煙草を吹かせながら、その屈強な肉体の男は戦場での束の間の休息を嗜んでいた。
如何にも明晰な頭脳の持ち主のように見える知的な雰囲気を持つ参謀役の男がその男の元に歩み寄ると、
「頭、件の稼働要塞は止まることなく進み続けています。」
淡々とした口調で戦況報告を始めた。
無機質な声の参謀の報告は続く。
「索敵班の報告結果によると、恐らく永久機関…… 旧対戦時に西側で造られた不停炉を積んでいるのかと。」
フゥー、と参謀の声を遮る様にリーダーの男は深々と、けだるそうに副流煙を吐き出した。
「────周囲に強き心臓は出てたか?」
「いえ、ですが、旧世代の強き心臓の増加装甲に用いられていた四重結合フラーレン・強化タングステン複合積層装甲が駆動脚のハードポイントを頑強に保護している為、稼働要塞の機動力を奪うという正攻法は不可能ではありませんが、消費する弾薬の量や要する時間を鑑みても、彼らに対しては堅実的な手ではありません。」
ハァー………っと竜が吐息を漏らすように力強く最後の煙を吐き出すと、頭と呼ばれたその屈強な男は、黒く冷たい装甲板の床に煙草を投げ捨てると、
「━━━━なら、上を潰す迄だ。」
と鋭い眼差しで立ち上がり、参謀にこう告げる。
「旅団狩り《キャラバン・ハント》だ。今夜は盛大に暴れるぞ。」