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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

鏡よ 鏡よ 鏡さん

作者: 羽入 満月

「鏡よ、鏡よ、鏡さん。この世で一番美しいのはだあれ?」

 魔法の鏡にそう尋ねた女の人がいる。

 その女の人はもちろん、自分が「一番美しい」と返事がもらえると思って尋ねているのだ。

 自分の美しさを知っているから。自分が美しいと思っているから。

 世の中には自分が一番と思っている人や一番でないと気に食わない人がいる。

 でも、それを自覚している人としていない人がいるようで…


 ----------------


 私、七瀬(ななせ) 果歩(かほ)は、自分が美人なことを知っている。

 身長は高いし、顔の造作だって良い。モデルの仕事でもやれるんじゃないかって思うほどだ。

 そして、何より、自分磨きをしている。私服だっておしゃれに気を使って、髪はダークブラウンに染めて、中学校の制服だって着こなしてる。

 教師どもには不評だけど、スカートを短くしてセーラー服のリボンを高い位置で結び袖のボタンなんて留めない。

 みんな同じ格好をしている中でもおしゃれにいられるように日々努力をしているのだ。


 なのに。

 中学に入って好きになった陸上部に所属するあいつは、私に振り向かない。

 身長は低いけど、結構イケメンで教師たちに媚びを売らずちょっと不良っぽい所がいい。


 なのに。

 なんで髪の毛はぱっつん前髪で耳下でおさげを結って制服を規定通り来ているぱっとしないあの子のことをあいつは目で追ってるの?

 初めて会った時から、あいつの眼中にはあの子しかなかった。

 あいつは、上手くあの子に声を掛けられず、意地悪をしていた。


 ならば。

 これに乗っかってあの子に意地悪した。

 それをやっている間はあいつの隣には私がいた。


 何をやっても反応を返さないあの子をいじめるのは、つまらなかったけど、あいつの隣にいられるのが嬉しかった。

 そして自分より下がいることに安心した。

 クラスの子たちだって私の周りに集まって、まるで私は、女王様の気分だった。

 そんなつまらなくも楽しい中学生活が終わって、高校に進学した。

 正し、都会の高校に。


 親が離婚して引っ越しを余儀なくされたのだ。


 そして、都会には見る目のない奴がいっぱいいた。

 誰も私のことを見てくれない。


 なんで?なんでなの?


 ほら、見てよ?あんな子より身長が高くて痩せているでしょう?

 ほら、その子より、髪の毛や肌だってお手入れされているでしょう?

 ほら、そこら辺の女の子よりおしゃれだし、洋服だって似合っているでしょう?


 なのに なんで 私を見てくれないの?


 それどころか、陰口を言われたり、無視されなきゃいけないの?


『勘違い女 うざい 化粧臭いし、かわいくない』


 そんなことを言われる覚えはない。


 なんで私があの子がやられるようなことやられなきゃいけないの?


 なんで なんで なんで


 私はおしゃれで、かわいくて、美人で、みんなの上に立つような存在なのよ。

 下に見られるような人間じゃないの。


 あの子がされたことをちょっとされたことをされただけで、なんで私の目からは涙が涙があふれてくるの。


 泣いて、叫んで、暴れまわった。



 さんざん、発散したらちょっと落ち着いてきた。


 ああそうか、みんな私の美しさに嫉妬しているんだ。

 だから、負け惜しみを言っているんだ。

 私があの子の言われるようなことを言われてけなされるのはおかしいことだから、みんながおかしいに決まってる。


 ほら、同学年はお子様だから。

 私は高嶺の花なのよ。



 だって、私が一番美人で、みんな私より下なのだから。

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