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最大の失敗と最後の反省会

俺は眩しい光景に目を細めながらこう呟いた。


「汚い花火だぜ・・・」


嘘である。大嘘である。実際には俺の心の中はこんな感じだった。


(いいいいっっよしゃあああああぁぁぁ!!!!見たかこのクソ魔物め!!人間様を舐めるからこういう目に遭うんだぜ!!これでこのクソッタレな世界ともおさらばだ!!あばよ異世界!あばよクソ立札!!バキバキに圧し折ってやろうとも思ったが、俺様の寛大な心で許してやるぜ!!)


ちょっとうまくいっただけでこれである。ちなみに戦績としては一勝三敗であるため勝ち誇れる要素はどこにもない。というかそもそもスライム相手に舐め切った態度を取っていたのは他の誰でもない(他に誰もいない)黒田健人、俺である。


ん?なぜ勝利直後にまるで他人事のようにこんなに冷静に話しているのかって?当然だ。何せ先ほどの恥ずかしい絶叫もまた死亡フラグであり、今話している俺は厳密にいえば他人と言えなくもないのだから。




(ん、よく見たらさっきよりデカくなってないか?)


5メートル四方のブルーシートに対して青スライムの直径は約80センチ、どう見てもブルーシートを圧迫するほどのサイズではなかった。


それが今では巨大なビー玉でも入っているかのように丸々とした輪郭を晒している。


本来なら近づくべきではなかったのだろう。だが怖いもの見たさ半分、自分の勝利をこの目で確かめたい欲求半分からついつい近づいてしまい、それでも最低限の用心は忘れなかったようで物干し竿を召喚し燃え尽きかけている巾着をつついてみた。




ッッッパーーーーーーーーン!!!!「ギャーーーーーーーー!!!!!!!」




ここで見るも無残な惨状をグダグダ述べても誰も得をしないので、客観的な四度目の死の状況とこの異世界転移の結末を簡潔に述べることにしよう。



結論から言うと、物干し竿でつついた巾着から飛び出してきたのは、俺が仕込んだ炎と燃えかけのサラダ油、さらには半ば蒸発して高温になっている元々は青スライムを構成していた水蒸気と、こちらも高温の残ったスライムの体液だった。つまり水蒸気爆発が起こったのである。


これがスライムではなくてただの水だったら何の問題もなく蒸発し上空へ上っていたのだろうが、おそらくスライムの体の構造が水分を逃がしにくくなっていたのと、落とし穴の中でブルーシートと布で包んでいたため、熱の逃げ場がなかったということなのだろう。



壮絶な焼死から復活した俺だったが、異世界の神様もメンタルの復活まではしてくれなかったらしく、地獄の底まで凹んだ精神状態でこの孤独な反省会を延々と続けていたわけだ。結局、しびれを切らした例の立札の背後の何物かが再び金盥を落とすまで、俺が正気に戻ることはなかった。




その後、どうやら相打ちでは家に帰してくれないようだと理解した俺は落とし穴の罠を再構築(蘇生したら穴も含めて痕跡がすべて消えていた)、同じ手順で再び青スライムを火達磨にし、同じ失敗を繰り返さないように一時間放置の後、耐火シートを召喚して盾代わりにしながら今度は最初に投石で反応を確認、さらに近づいて物干し竿でつついてみて異常のないことを確かめると落とし穴の中を確認し、ようやく青スライムへの勝利を確信したのだった。


その直後に俺の体が白く光りだし、結局俺を異世界へ呼び出した奴の目的も知ることも、スライム退治のご褒美ももらうこともなく、ただ平穏無事の約束されただけの元の世界へ帰ることになったのだった。最後に目の前に現れた、何の文字も出ていない例の立札を蹴飛ばしてやったのはせめてもの意趣返しだ。


ん?この話を誰かに話したかだって?いやいや、生活用品とはいえアイテム使い放題という恵まれた状況でたかがスライム相手に一勝四敗だぞ。


信じてもらえないとか以前に、どこの世界に自分の恥ずかしすぎるエピソードを喋りたがる奴がいるっていうんだよ。まあ、どこの世界って異世界の話なんだけど。




でも、いつかネット小説の異世界ファンタジー物として公開してみるのもいいかもな。

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