死亡フラグと手詰まり
※前回のあらすじ ハンマーでの攻撃で青スライムに会心の一撃、しかし敗北セリフを叫ぶ
「いよっしゃーー!!勝ったな!!」
まあ、後から考えてみれば勝利宣言には早すぎたとは思う。ハンマー攻撃の効果をちゃんと確認したとは言い難かったし、青スライムの死亡確認もしていない。
何より俺と魔物以外は存在しないこの特殊な空間においてミッションクリアを告げる立札なり神様なりが出現していないということは、すなわちまだ戦いが終わっていない証拠と言えるはずだったのだ。
ヒヤリ
「うおっ!冷たっ!?」
興奮していたせいか、右足の膝のあたりまで心地良いクール感が押し寄せていることに気づかなかった。勝利を確信して勝利の雄たけびを上げて足元から目を離していた時間はせいぜい五秒といったところだから、青スライムはまたもや一切減速することなくマイレッグクーラーにジョブチェンジしたことになる。
「こっこのっ、離せっ、くそっ!!」
ストレッチの要領で高速で足を振ってみたり、サッカーのシュートのように全力で吹き飛ばそうとするが、ハーフサイズまで縮小した青スライムは一向に剥がれるそぶりを見せない。
(ちょ、マジかよ!取りつかれただけで生存フラグ全損かよ!?何処までクソゲーなんだよ!!)
そもそも二度目の死までは戦いにすらなっていなかったことはこの際全力で棚上げである。
「ヒッ!?」
若干のあきらめムードが漂ってきた中で少し冷静になれたのだろう、周りを見ますと飛び散ったはずの大小様々な青いグミが俺の体めがけて集合しつつある光景が俺の視界に飛び込んできた。
ざっと見でしかないが、どうやらすべての欠片が合体すると完全に元のサイズに戻りそうだ。
(冗談じゃない!会心の一撃だと思って喜んでいた戦果は、実は全くのノーダメージだったってことかよ!?)
結局、こちらの動きには全く支障がないのに打つ手なし、という攻撃はおろか防御の方法すら見つからないという完全に詰んだ状況で、約一分後に完全復活を果たした青スライムは俺の頭部に到達、最初は俺の頭をヒンヤリさせ、最終的に全身をヒンヤリさせることで俺は三度目の死を迎えた。
(はああぁぁぁぁ・・・どうするよこれ)
一分後(体感できるわけではないのでそうらしい、としか言いようがないが)に無事復活を果たした俺は戦闘を再開する前に俺が有利な点、不利な点を一旦整理して対策を立てることにしたのだが、現状は厳しいと言わざるを得なかった。
有利な点
・こちらの好きなタイミングで戦闘開始できる
・スライムの足が遅く普通に歩いただけで逃げ切れる
・現段階ではスライムの攻撃手段が取りついての窒息攻撃のみのため予測するまでもなく避けられる(三度も死んだが)
不利な点
・何があろうと最短距離を真っすぐ突っ込んでくる(おそらく障害物があってもお構いなし)
・斬撃無効
・打撃無効
・取りつかれたら詰む
・黒田健人終了のお知らせ
(って違う違う!諦めたらそこで試合終了だから!!ていうかルール通りならマジで人生終了するから!!)
とはいえ少しでもダメージがあれば話は別なのだが、斧もハンマーも確実に当たったのに毛ほどのダメージも与えられた気配はなかった。
これでは何十発、何百発と当てていけばいつかは、なんて持久戦もとる気すら失せる。いや、いよいよとなればやるしかないが。
ともかく正に糠に釘、暖簾に腕押し状態とはこのことである。もはやあの青スライムが生き物ではなくただの水の塊にしか見えなくなってきた。
ん、んん、水の塊?生き物じゃない?
そうか!生き物だと思わなければいいのか!!
発想の転換で着想を得た俺は、早速実験の開始のため、準備すべきアイテムを吟味し始めるのだった。