蘇生とアイテム召喚
はっ!ここは涅槃か?なんてこともなく、俺は草しかない謎の異世界で蘇生した。まあ、諦めの境地には程遠い死に方だったから当然だが。
それにしてもゲームやアニメで見られる雑魚っぷりとは裏腹に、恐ろしい殺し方をする魔物だという事実に俺は驚愕の色を隠せなかった。ちょっとかわいい青いグミの正体は生き物を窒息死させる凶悪なグミでした。
いや、魔物だとわかっていて不用意に接触した俺が間抜けなだけなのだが。なんだかんだ言っても、突然異世界に飛ばされて魔物と戦う羽目になったショックがデカくて錯乱していたのだろう。
幸い心が折れない限りやり直しは効くらしいから、いい教訓になったと思っておこう。思っておきたいな。マジか、蘇生したとはいえ、オレ、死んだのか・・・
さて、いつまで落ち込んでいても誰かが相談に乗ってくれるわけでもないし、何より長時間落ち込んでいるとやる気なしとみなされてサクッとゲームオーバーになってしまう可能性もある。いっちょやりますか。
と、振り返ってみると先ほどと同じように青スライムが地面に鎮座していた。そしてこちらが気付くのを待っていたかのようにゆっくりと這って近づいてきた。スピードは大体赤ん坊のハイハイと同じくらいだろうか。こちらも一歩を踏み出して近づこうとしたが、すんでのところで思いとどまる。
(無策のまま、しかも素手で近づいてもさっきと同じようにスライムの体に取り込まれて詰んでしまうのか確実だ。最初の立て札に想像するだけでアイテムがゲットできると書いてあったし、試してみるか)
一回目の死亡やら何やらでのどの渇きを覚えていた俺は、手始めに500mmペットボトルの水を想像した。すると、目の前にうっすらと何かが見えたかと思うと徐々に輪郭がはっきりし始め、3秒後には要望通りペットボトルが出現して地面にゆっくりと落下した。イメージがあいまいだったせいか商品のラベルはなかった。
「おお、チートは無しと立札には書いてあったが、これだけでも十分すぎるチートじゃねぇか!」
とりあえず接近されないようにこちらも距離を保つため歩き出すしながら水を飲んでみるが全く問題のない、まじりっけなしの水だった。さらにのどの渇きをいやしたら次は空腹対策に栄養補助食品の例の塊を召喚、さすがに歩きながらだと食べにくいので駆け足で一旦スライムとの間合いを広げ、一分ほどの時間を稼いでから塊二本分の簡単な食事をとった。
(さてと、人心地も付いたことだし、生活用品限定らしいがアイテム召喚という便利なスキルも一応確認できた。あとは、スライムを倒すための武器選びだな。とはいっても相手は未知の異世界の魔物。どうするかな。)
とはいっても、平凡な知能の一大学生では発想力にも限界がある。幸いスライムの速度は大したことがないため現実における定番武器から試していくことにした。