転移と初戦
なにかファンタジー小説を書いてみたいな、という軽い気持ちで始めました。楽しんでいただければ幸いです。
突然だが異世界に飛ばされた。
大学生活の小遣い稼ぎのバイトに出かけようと自宅のドアを開けたらいつもとは全く違う場所に出た。呆然とした直後に振り返ってみると自宅のドアどころか家そのものが消えていた。
異世界といっても一面草原で、人の気配どころか他の生き物の息遣いすら感じない。と思ったら目の前に立札が立っていた。ちょっと読むのに時間がかかったが要約するとこうだ。
・今からここで異世界の魔物、スライムと戦ってもらう
・すべての戦いをクリアしたら申し訳ないとの場所に転送してもらえる
・しかし、魔法や闘気といった異世界の力、いわゆるチートは一切与えられない
・その代わりに元の世界の生活道具レベルまでなら念じるだけで出してもらえる
・何回死んでも1分後に自動蘇生されるが、スライムを倒せないと精神があきらめた瞬間、即死し二度と蘇生されることはなく、元の世界に帰ることもできない
ちなみにこの立て札、どういうわけか一つの項目を読み終わるとこちらの意思を察したかのように次の項目が自動で表示された。またある程度の疑問も立札が瞬時に答えてくれる仕様になっているようだ。
一通り状況とルールを理解すると、背後でカサカサと草をかき分ける音がした。振り返ってみると青い半透明の巨大なグミがこちらに近づいてきた。
「おお、マジで異世界モンスターだよ、なんかちょっとかわいいな」
「サイズは直径80cmといったところか。しかし見事にグミだな、核とか弱点があるのかと思ったらまじりっけなしの100%グミだろこれ。ちょっと味が気になってくるほどグミにしか見えんな」
「ちょっと触ってみるか。おおお、ヒンヤリスベスベで気持ちいいっ!!まさに至福の触り心地!!プチプチ並みの中毒性があるな!!ん、押してみると手が沈んみこんでいくな。中は中で毛穴一つ一つを包み込んでくれるかのような一体感!!左手も突っ込んで、と、おおお、気持ちよさも二倍だよ!!」
「しかしこうなると顔もつけてみたくなるな。やばいかな?ちょっとだけちょっとだけ、・・・・・なんじゃこりゃあ!!顔じゅうの細胞という細胞をやさしく包み込んでくれるフィット感、まさしく神の手!あまりの気持ちよさに眠たくなってくるほどだよ。やべぇ、何もする気がおきねぇ、ちょっとだけ、チョットだけめをつぶるだけだから・・・おぉ・・しふくの・・・と・・・き・・・・・・・・・・・・・・・」
こうして俺こと黒田健人の元の世界への帰還を賭けた最初の戦いは壮絶な最期で幕を閉じたのだった。