はつ。
ド短編。
かなり絞りました。
くれぐれも深夜に独りで読まないように。
ど。
どっ。
どっ、どっ、どっ。
どっ、どっ、どっ、どっ、どっ……。
高鳴る鼓動。
私はまたかと、ウンザリして目を覚まし、傍らの其れを見やる。
重くのし掛かる身体を面倒臭そうにして起き上がると、視線の先には。
僅かばかりの血溜まりに浮かび上がる『心臓』が其処にあった。
其れは相も変わらず鼓動を打ち続ける。
狭い寝室には、明かりも灯されておらず、たったひとつの物体が絶え間無く蠢いていた。
私は、敢えて無視を極め込む。
ど。
どっ。
どっ、どっ、どっ。
どっ、どっ、どっ、どっ、どっ……。
その執拗は脳裏に鳴り響く。
鬱陶しくて、手元にあった枕を投げつけるも、まるで効果はなく。
またもや、激しく高鳴る鼓動が私を襲うのだ。
どっどっどっ。
どっどっどっどっ。
どっどっどっどっどっどっ。
「五月蝿いッ!!」
分厚い布団を頭に被り、何も聴かなかった事を貫き通そうとするわたし。
だが、微かに聴こえた声が好奇心を擽り、私は空いた隙間から覗き込む。
「早く、もとに戻してよ」
そう。
其れはわたしの心臓だった。
明くる日の朝。
多人数の警察官は大家さんと共に、わたしの部屋を調査していた。
「彼女、ごく普通の優しくて思いやりのある娘でしたのですがねぇ……」
「はぁ。左様ですか」
夥しい閃光と共に、無防備にも曝される遺体が惨たらしく寝転がる。
やがて気付く調査員は神妙な面持ちでこう告げた。
「…………心臓が有りません」
そりゃあ、そうだ。
何故ならば、未だにわたしの傍らで早く身体に帰りたそうにせっついては。
まだ、血が足りないと辺りを見渡しているのだから。
実はホラー大好きです。
今後も書くかもしれません。
ちなみに、タイトルは焼き鳥で『ハツ(ハート)』が好きなもので(笑)