13.キリコさんなぜそんなにかっこいいの
次の日ようやく体力の回復したシンジ君、なぜか体が軽いのです。今までのぼやーとした感覚や重たい体がスッキリして、生まれ変わったようです。キリコさんが言っていた余分な精霊魂が、抜けたのではないかとシンジ君は思いました。
今日から隣の席にキリコさんの弟のキリ君が、サポート役で付いてくれます。シンジ君はPCなどの仕事をキリ君に教え、シンジ君はキリ君から、精霊のご加護の使い方と制御の仕方を学びます。
キリ君はシンジ君が持ち込んだ私物のノートPCを借りて、ネットサーフィンなどしています。キリ君はこの国の人族の、あらゆる営みを知ろうとしています。
時々アケミさんが訪れキリ君にローマ字入力とか、英語の読み方や意味をニコニコしながら教えています。真っ白な毛皮でクリとしたルビー色の瞳で、アケミさんと話しているキリ君。アケミさんは赤い顔で目がトローンとして、僕がいなければ絶対飛びかかっていたでしょうね。
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時々キリ君の代わりにキリコさんと外で、精霊使いの制御の仕方を細かく教えてもらっています。今では小さなものから大きなものまで、火の玉でも水の玉でも目の先に何時間でも、ゆらゆらと空中に留めて置けます。
とにかくキリコさんはかっこいいんです!精霊使いを実践するとフワーと白い毛がたなびき、太くて白いしっぽがバランスを取るために優雅に動き、最後の決めポーズにキリ君と一緒のルビー色の瞳がキラッと輝くのです。
キリコさんに習って呪文を唱えずに水でも火でも、精霊使いが出来る様になりました。これが出来るのはキリコさんと、元の里にいる人族の魔導師と言われている、最高幹部位しかいないそうです。
なぜそんな難しいことが新人の僕にできるのか、キリコさんは不思議な顔をしています。シンジ君はため池の真ん中めがけて、両手を出し水の精霊と火の精霊両方の精霊使いを操っています!
水の精霊に願い大量の水を飛ばして、火の精霊に願いその放出している水に火の塊をぶつけるのです!『バシッバシッ!』と大きな音が出て、大量の水蒸気が発生して辺り一面濃い霧が発生しています。シンジ君は水の精霊、火の精霊の両方のご加護があるのが僕一人だけなら、誰にもできない必殺の技ができないかと工夫しているのです。
コロルさんの人族による蹂躙された里の話を思い出して、このまま平和が続くとは思えない、もし獣人族や皆んなに危険が及ぶなら、精霊の加護のある僕は率先して皆んなを守らなくてはと、最近冴え渡ってきた頭に元ひきこもりのシンジ君は誓うのです。