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お江戸転生物語  作者: 紫紫
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トラさんおススメの店にて


「いらっしゃい、らっしゃーい!いい野菜入ってるよー!さあ買った買ったー!」「魚―、魚はいらんかー。魚―。」「ちょっとそこのお兄さん、うちで休んでいかれまへん?」「てぇへんだてぇへんだ!」「あんた聞いたかい。そこの奥さんって・・・。」「おい、次郎。豆腐落とすなよ!」「兄ちゃん待ってよー。」


町に入るとそこは活気であふれていた。物珍しくてトラさんの横を歩きながらキョロキョロしてしまう。そば・うどん屋、八百屋、魚屋、肉屋、茶屋、あれは・・・なんだろう。時代劇まんまの世界観に、本当は転生してきたんじゃなくてタイムスリップしてきたんじゃないかと疑いそうになる。まぁ地球の武士は魔法使わないけど。


「あ、トラさんだ。おかえりなさーい。」

「お、トラさんじゃないか。今日は酒はいらんのか?」

「トラさーん、お団子食べてってよー。」


トラさんは町の皆にも好かれているらしく、様々な人から声をかけられている。


「トラさんって有名人なんですね。」


「有名人って訳じゃあねぇが、町の者にはよくしてもらっててな。ここの奴らは皆ちぃと喧嘩っ早くて見栄っ張りだが、気のいい奴らなんだ。」


「へえ、江戸っ子なんですね。」


「おうよ。さて、着いたぞ。ここが江戸1番の飯屋、『たぬき亭』だ。上は宿屋になってるから、泊まるにもいい所だぜ。俺も今はここに泊まってるんだ。」


「へえ、なんかよさげな所ですね。」


「よさげな所じゃなくて、よい所だ。ほら、入るぞ。」


トラさんの後について紫色の暖簾をくぐり店に入ると


「「いらっしゃいませ~。」」


という明朗な声がかけられる。


「奥の座敷は空いてるか?」


「え、お座敷ですか?珍しいですね。トラさんいつもカウンター席なのに。」


トラさんの言葉に対応にでた若い給仕の女性が少し驚いたように言う。


「まあ、ちょっとな。」


「ふーん、そうですか。お座敷空いてるのでご案内いたしますね。」


僕たちは1番奥の座敷に案内された。靴を脱いで座敷に上がるとそこは広い個室のようになっていた。2人で使うには少し申し訳ない大きさだ。


「とりあえず適当な酒と、とろろ雑穀と・・・つまみを頼む。」


トラさんは席に着くと同時に給仕さんにそう注文した。給仕さんは承りましたと言って下がった。


「さてと、じゃあ早速だがお前について教えてくれよ、リク。」


僕がトラさんの向かいに座ったらすぐにトラさんはそう聞いてきた。


「僕についてと言われても漠然としすぎていて困りますよ。何を答えたらいいんですか?」


「いや、お前の年とか職業とかでいいんだが・・・。」


「ステータス見せるんでもいいですか?」


「な!いいのか?俺に見せちまって?」


「よくわからないスキルとかあるし使い方もわからないのでついでに色々教えてください。」


「お、おう。わかった。」


「えっと、ステータスってどうやって人に見せるんですか?」


「・・・そこからか。」



「お前、転生者だろ。」


僕のステータスをみてトラさんは最初にそう言った。


「え!わかるんですか?」


「いや、称号に『転生者』ってあるし。」


「あ、そうでしたね。転生者って多いんですか?」


「さあな。少なくとも知り合いにはいないし噂も聞かねぇな。ただ200年前に初めて冒険者ランクSSSになったのは転生者だったって話だぞ。」


おお。200年前にもいたのか。しかも無双してる。いいなあ。


「隠蔽スキルがあるなら何個か隠したほうがいいかもな。」


「隠蔽スキルってスキルを隠すものなの?」


「いや、それだけじゃねぇぞ。Lv1は自分のスキルを隠したりくらいしかできないが、レベルが上がると他人のスキルを隠したり、気配を消したり、物も隠せるから地味に便利なスキルだ。」


「ふーん、そうなんですね。それで、どれを隠したらいいですか?」


「そうだなぁ。とりあえず称号の『神の知人』は隠しとけ。あとスキルの『アイテムボックス』もレベルがないのがばれると厄介だ。隠しとけ。あとは・・・『学習』も隠したほうがいいな。」


確かに『神の知人』スキルは見られたら面倒だし、『アイテムボックス』もレベルがついていないのは相当異常らしい。普通はレベルによってアイテムボックスの容量が決まるのだが、レベルがないという事は容量も未知だ。トラさん曰く「無限にはいるんじゃねえか。」だそうだ。それもばれたら面倒。だが、


「どうして『学習』を隠すんです?なんか地味そうなスキルなのに。」


「お前、さっきステータスを見たときに回復魔法が使えるようになってるって言ったよな。」


「え、そうですけど。」


そう、さっきステータスを確認したら、新しいカテゴリーとして《魔法》がでていて、そこに『回復魔法Lv1』という表記があったのだ。


「恐らく、それが『学習』スキルだ。俺がお前の傷を治すときに使った回復魔法をお前が『学習』して自分の物にしたんだろう。」


「ほー。・・・え、それって結構ヤバくないですか?」


「だから隠せと言っている。」


僕はトラさんの魔法をまだ1回しか見ていない。それなのにもうその魔法が使えるようになっているのだ。つまり見たスキルを1回で『学習』する。それがこのスキルなのだろう。どこまでのことができるのかはまだわからないが危険なスキルであることはわかる。


「わかりました。隠蔽します。」


「そうしとけそうしとけ。」


「よし、『隠蔽』。」


ステータス画面に手をかざし隠蔽したいところをイメージしながら唱える。恐る恐るステータス画面を見てみるとちゃんと消えていた。


「やった。トラさん、出来たよ!」


「よかったな。ちょっと見せてみろ。」


隠蔽した僕のステータス画面はこうなった。


[ステータス]

名前:リク

性別:男

種族:人族

年齢:16

レベル:1

魔力量:3500/3500

職業:旅人

スキル:剣術Lv3 調査Lv1 隠蔽Lv1 料理Lv10 家事Lv10 

魔法:回復魔法Lv1

称号:放浪する者 学ぶ者


「結構隠したな。名前はリクだけにしたのか?あとは、物理攻撃耐性とか魔法攻撃耐性も隠したのか。」


「苗字ある人って少ないんですよね。だったらなくしちゃっていいかなって思って。あの二つのスキルは他と比べてレベルが高かったので隠しました。」


「そうか。偽証スキルがあると便利なんだがな。」


「偽証スキル?」


「名前のまんま。スキルの内容とかを偽証するスキルだ。」


「へー。そのうち欲しいなあ。」


その時、トントンと襖を叩く音がした。


「お待たせいたしました。お料理をお持ちしました。」


日本酒と料理が運ばれてきた。



主人公のフルネームを隠すことにそろそろ限界を感じてきました。

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