僕の大事な大事な両親
前の作品、「僕の大事な大事な友達」を読んでからの方が良いかと。
話は繋がっていますので。
僕は、小さい頃に両親を亡くした。
交通事故だった。その時は、家族みんなで旅行へ行く予定だったんだ。日帰りだけど、僕にとっては、とても大事な行事のような物だった。そんな時、信号待ちしている時、別の車が突っ込んで来たのだ。お母さんは、僕を庇っても重傷。お父さんは、間も無く死亡。僕だけ、生き残ってしまった。
僕は、お母さんのお陰で、軽傷で済んだ。
僕はそんな自分を、呪った。僕だけ一人ぼっちだ。
けれど、僕の友達はそんな事お構い無しに、いつも遊びに誘ってくれたんだ。
僕にとって、三人は親友だ。心の友と書いて、心友だ。
他の奴らは「可哀想だ」って言って僕を蔑む。けど、三人は違った。「そんなの関係無いよ」って言って、肩を組んで、励ましてくれた。
そんな三人の事が、僕は大好きで、家族と同じくらい大切で大事な存在だった。
ある日、僕は親戚の家に預けられた。
別に嫌では無かった。親戚の人は、みんな仲がいいから、優しいから好きだった。
けれどある日、交通事故で親戚のおばさんが亡くなった。即死だったそうだ。
次の日、また親戚の、今度はお兄さんだった。トラックに撥ねられ、即死。
だんだん僕は、「疫病神」と呼ばれ始めていった。
学校では、いじめが流行った。
四人で遊んだ。サッカーをしたり、公園で無邪気に遊んで、最後には三人で帰った。
嫌な思い出の方が多いけれど、それを掻き消すくらい、良い思い出が沢山出来た。それも、二人のお陰だった。
僕は幸せ者だ。
またサッカーをして、二人で帰った。帰り道、笑い合ったのを覚えている。
ああ、僕はなんて幸せなんだ!
そう言って、彼は僕の喉を引き裂いた。
何で、どうしてこうなったのだろうか。彼は、最後に見た彼の顔には、僕の血と、引き攣ったような笑みが浮かんでいた。
そこまでして、僕を、どうしてーーーー。
僕は当初、両親が憎かった。けれど、その反面。とても愛していた。親が子を愛するように、僕も。
交通事故があったその年は、僕はまだ幼く、幼稚園を卒園したばかりだった。もうすぐ小学生になる。そんな時、事故は起こってしまった。
ニュースで見た。
その事故の、あの車。運転手は薬をやっていたらしい。ーーーー麻薬、だ。
その交通事故の事は記憶に無いと証言しているみたいだ。僕は、犯人を恨む。
僕を一人ぼっちにさせた、犯人を恨む。
けれどもその反面、感謝をしている。
僕に、大事な大事な友達を作ってくれてありがとう、って。
だって、あの事故がなければ、多分、あの3人の輪に入っていなかっただろう。それ程、僕はだんだん嫌われていったから。
親戚の人のせいで、僕はまた、クラスで浮いた。けれど、三人がいたから。あの三人がいてくれたお陰で、僕は一人から開放された。
目を覚ますと、家に居た。
ベッドの上で、僕は寝ていたようだ。体を起こしーーーー違和感を覚える。
体って、こんなに軽かったかな。
窓を見る。
ーーーーあれ、何ここ。どこだよ、なんで、草原なんかにいるんだ?
急いで家を出る。
ばっと扉を開け放ち、走る、走る、走る。
川が見える、こんな場所に、川なんかあったっけか?
向こうで、ーーーーあれ。
「✕✕じゃん!なんでいんだよ!」
「おいでよ、僕と一緒に、また、遊ぼうよ。遊ぼうよ」
「ああ!待ってろ、今行くからな!」
見る限り、川は浅い。
僕は飛び越え、何も無い場所でハイタッチを交わした。
ーーーー顔が青ざめていくのを感じ、後ろを見た。
〈今日未明、何者かに刃物で切りつけられた遺体を発見されました。切り傷は首元にあり、即死でした。警察は殺害事件として調査をすすめーーーー〉
真っ暗な部屋で、彼はスナック菓子を頬張りながら、その部屋で唯一の光源であるテレビを見つめていた。
「ああ、可哀想に。僕も一緒に行ってあげるからね。
ーーーーーーーー彼と一緒に。」
テレビを消し、スナック菓子をばり、っと噛み砕き、呟いた。
真っ暗な部屋で一つ雫が落ちる音が、響いた。