忘れてたけどイケメン
「ありがとうございました。」
大学の前に着いて車を降りる。
「行ってらっしゃい葉月ちゃん。頑張ってね。」
この人も今から仕事なんだよね。私の大学寄ったら遠回りなのに。
そもそもこの人のせいでこんなことになってるんだから、私がそんなこと気にする筋合いはないんだけど。
「・・・はい。まぁ、あの、壱也さんも、・・・お仕事頑張ってください。」
その返事が予想外だったのか、少し目を見開いた後、ぶぁ!っと華が舞うような笑顔になる壱也さん。
「ヤバい、葉月ちゃん今のもう一回言って!!
「早く仕事行ってください。」
壱也さんの、その笑顔に私の顔が一瞬熱くなったような気がして慌ててくるりと背を向け歩き出す。
すこし胸がドキドキしてる。ような、気がする。
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「なんだったのあの甘酸っぱい雰囲気。ずるい、すっごいかっこいいじゃんあの人!」
大学に着いてすぐ、興奮したように近づいてきた有希のその一言で、先ほどのやり取りを見られていたことに気づく。
あの笑顔に不覚にもときめいてしまったが故に、何も返すことができない。
「薔薇ばっかりもってくる男なんてどんなナルシスト野郎かと思ったけど、あのハイスペックな顔面はやばいね。マネキンみたいじゃん。」
「なにそれ、褒めてるの?」
「最上級の讃辞」
「まぁ、確かに、顔はかっこよかった。久しぶりにまともに顔見た気がする。」
「毎朝迎えに来てるのに?」
「変なアプローチバッカりされてると、フィルターかかるよね?ダメな方に。」
ブハッと吹き出して笑う有希。
そのままヒーヒーとひとしきり笑った後に、私のカバンから覗く緑色のバラに気付き、涙をぬぐいやらが話を戻す。
「それが今日の貢物?」
「え?あ、うん。急いでたから家に置いても来れなかった。萎れるかな?」
「さー。半日くい大丈夫じゃない?それより、そんな色の花初めてみたわ。」
「緑のバラっていくらすると思う?」
「高いんじゃない?」
「・・・。」
やっぱりそうだよね。やっぱり萎れるかな。結局間に合ったし家に置いてくればよかった。
「そう言えば前は花束って言ってたじゃん。何で4本なの?」
「そんなに要らないって言ったからじゃない?なんで?」
「いや、意味あるのかなって。バラって本数にも意味あるはずだし。」
・・何それ知らない。
変なとこで博識な有希。「調べてみよー」と早速スマホでググってる。数秒後、「へー」なんて言いながら私に調べた結果を見せて来る。
4本・・・死ぬまで変わらない気持ち。
「・・・。」
「これ知ってて4本にしてたとしたら凄いよね。ある意味尊敬だわ。」
やや顔色が悪くなる私に、過剰な愛ってやつねー。なんて軽く笑っている有希。所詮他人事かっ!
「もらわなきゃよかった。」
「ちなみに値段がこっち」
ついでに緑色の薔薇の値段を調べていたのか、スマホの画面をスライドさせえ見せられる、「うそ、高っ。」と小声に漏れる。
「1日くらいバイトしたら買えるじゃん」
「貴重な1日の労働を普通こんな枯れるものに使う?」
「特別な贈り物ならアリじゃん?」
「特別な・・。ね。」
「まぁお金持ちの金銭感覚なんてそんなもんよ。」
今から1限目の講義が始まるのにはぁっと深くため息が出た。
朝からどっと疲れた。
寺本 有希
看護学生
黒髪ショート。つり目美人。見た目とサバサバした裏表のないためキツイと思われがち。




