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葉月ちゃんと壱也さん 2  作者: 藤城 瑞香
壱也さんに惚れるまで
3/5

『常識』って辞書で引いてみて下さい。

ーーーーーーーーーー

ーーーーー


あの『お買い得』宣言から早2週間が経つ。

その間、家には一般庶民宅とは思えない程に色とりどりの薔薇が増え続けた。

ピンクの薔薇を貰った2日後に(無理矢理)渡された白の薔薇の花束。


『そもそもこんなに沢山貰っても飾れませんから。』


私の放った言葉が功を奏し、その翌日、壱也さんが持ってきたのは4本のオレンジの薔薇だった。抱える程の花束じゃないことに少しホッとしてしまった私。


『これ位なら邪魔にならないでしょ?』


『そ、うですね。ありがとうございます。』


花束を送られすぎて感覚が麻痺していたと言わざるを得ない。私の表情とその素直な言葉に気を良くした壱也さんはなんと翌日には黄色の薔薇を4本持ってきた。


『可愛いい色でしょ?』


『そうですね』


しまった。お礼なんか言わなきゃよかった。


でも、まぁ。そのうち渡す種類なくなって飽きるでしょ。


なんて呑気に考えていた私。ふとどれ位種類があるのかネットを開けて、・・数日前のホッとしている自分を殴ってやりたくなる。


【・・・薔薇の種類は、約2万種類以上あると言われて、、、、】


2万種類。


驚愕の数字に卒倒しかけた私だったが、意外にもその後の4日間、壱也さんからの薔薇攻撃が収まる

そもそもどれだけ薔薇の種類があったとしても、その全てが手に入るかどうかは別だ。

それに花の値段も馬鹿にならないだろうし。あの人だって一応は社会人なんだから、その辺の常識は持ち合わせてるはずだよね。まぁ、10も年下の子供に薔薇を送ってくるような非常識な人ではあるけど・・。


流石にそこまで馬鹿じゃないでしょ。


ーーーーーーーーーーーーーーー

ーーーーーーーーーー

ーーーーー

ガチャリと玄関を開けると、相変わらずのイケメンが爽やかな朝日をバックに出迎える。


「おはよう葉月ちゃん、愛してるよ」


4本の緑の薔薇。

そうだ、この人頭いいけど馬鹿だった。


差し出された珍しい色の薔薇についつい受け取ってしまった。ダメだ!私!!しっかりしなきゃ!!


「あの、そろそろ薔薇の博物館になっちゃうので、ここら辺でやめてくれません?」


「愛の博物館だね」


「気持ち悪いこと言わないで下さい。」


私の辛辣な返答にも微笑みで返す壱也さん。このまま言い争いしてたら、また電車に乗り遅れてこの人のお世話にならないといけなくなる。警告音が脳内で流れてはいるが、このまま放っておいたら本当に薔薇の博物館になってしまう。


「ちなみに緑の薔薇の花言葉はね、」


聞いてませんけど。


「壱也さん。」


「ん?」


「薔薇ってそんな簡単に手に入るものじゃないですよね?」


「そうだね、本当は毎日送りたいんだけど、さすがに俺の人脈でも緑の薔薇はなかなか手に入らなくって、4日もかかっちゃったよ。待たせちゃってごめんね。」


「なんで私が待ち望んでるていで話進めてるんですか。そもそもいくらしたんですか?これ。」


「さぁ。本数少ないし大したことないよ。」


「さぁって。」


「こういうのはね、お金じゃないんだよ。こうやって毎日会ってても。人の思いっていうのはちゃんと伝わらないものだからね。」


「お金じゃ無いならその辺の野花で充分です。」


「わかってないなぁ、愛を伝えるのは薔薇が基本だよ。」


「そんな基本知りません。」


「ところで葉月ちゃん。もう電車まにあわないよね?送ってくよ。」


ハッと時計を見るともう完全に電車には乗り遅れてしまう時間になっていた。


ジトッと視線を向ける私に、ごめんねっと笑う。


「乗っていってくれると嬉しいんだけどな」


この時間でそれ以外に選択肢が無いのを知っていながらその態度はずるい。


「お願いします。」


「喜んで」


ドアを開け流れるようにエスコートする壱也さん。まるで私が乗ることが決まっていたかのように助手席には私の好きなミルクティーがセットされている。


「まさか狙って薔薇持ってきたり話長引かせてるわけじゃ無いですよね。」


「まさか!」


そんなとんでも無い、指摘されて初めて気づいたよ!なんて大袈裟すぎて逆に怪しい。


静かなエンジン音が振動し、滑らかに車が出発した。




薔薇を4本。

気づかない方が幸せってこともあるよね。

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